2009年6月28日日曜日

駆ける~芳春

午後をちょっと回った喫茶店の店内
二人組の男女が顔を合わせて談笑していた

ねぇきいてる?もうさっきから目をそらしてばっかなんだから
でも就職が決まって良かったね。おめでとう。

今は自由業の段階だから何とも言えないな。
それに自分に才能のかけらなんてこれっぽっちもないし

嫌いなの?作家の仕事

物語を突き詰めていくと考えてはいけないことまで手が伸びて
それで追い詰められ生きる術を失ってしまう

私は追い詰められているときでもあなたが頭を抱えてるときも全て好き
だって走ってるじゃない、夢中な人って目に映るだけでもすばらしいわ

朝木は思い返していた親父の背中、いなくなった母、後妻の鈴


なんだこれは?

友達と一緒に作ったんです粘土の模型
近所のおねぇさんがモデルです

こんな訳のわからないことをするくらいなら読み書きをしっかりしろ

そう言うと父は粘土を処分した

教養は全て書物から入れなさい

父の教育観は押しつけがましかった
けれど尊敬していた

書斎で頭を抱えながら父はいつも何かをしていた
いつも毎週決まって父と外食に出かけるのが楽しみの一つだった

一緒に流しそうめんを食べていたとき

おいしいか?朝木
体をしっかり作るんだぞ

箸があまり進まなかった父
この頃から心労と結核を抱えていたと思う


一人の世界に入っているのは俺も同じだな
今現在、複雑さを増す社会と自分の関係

朝木はもう一度父親の残したものを確認しようと思った

2009年6月6日土曜日

セイムプレイス セイムワールド

今日もご苦労さん。

へへ仕事が始まる前にそりゃ無いよ。

そうだな、なんだか今日も景気が上がればいいけれど
あっついでだけど今日の朝刊買ってきてくれる?
無性に読みたくなっちゃって

わかったよ、ちょっとばかし急いでくる

男は食品工場に勤める30代
ただがむしゃらだった
未来は何となくうすぐもった晴れ
今日もそんな天気だった。

あぁここの信号かわるのずいぶん長いんだよなぁ
原付だし
まぁちょっとくらい

突然轟音とともに運命が待っていた
スローモーション
近づいてくるタンクローリー
光が飛び散った


ねぇ、彰ったら
う?
早く起きてよ、今日は定期検診の日でしょ

なぜか大きな夢を見ていたようだ
運命
2度目の命を運ばれたこと
母さんは自分の面倒を甲斐甲斐しく見てくれているが実際は誰も寄せ付けたくなかった
社会を自分という存在に

世界がどうあるのかは知らないが立ち入らせてはくれなかった

週一回の診断
先生は生活面だけではなく精神面へのケアもしてくれる
だから遠慮無く将来への不安を打ち明けた

そうだね職業訓練学校のへの斡旋もあるが
もっと心の静養をとってみるのもありかもしれない

・・・・

君の感受性は変化したばかりだ本当にやりたいことが見つかるかも知れないし

先生、俺はこの猛スピードに変化した世界でどう生きて行けばいいのか悩んでます

それは健常だった頃でも同じような心境だったと思う

具現化した世界はまるで自分の心を鏡に映したかのようだった
かけがえのないもの今こうしてたくさんの人間に囲まれ支えられている事実だった