2009年3月24日火曜日

あなたがいなければ意味がない

あ~ぁきょうも残業がしんどい

未だ学生な僕、お小遣い稼ぎと思いアルバイトを始めたけれど
結構大変だ。
ファーストフードを作る店。
そして笑顔でそれを売る店。

店内はいつでもピカピカにしておけよ

ちょっと最初に入った先輩は僕らを結構乱暴に扱う。

社会に出れば今までよりうんと責任は増える。
僕は社会勉強の一環も兼ねているんだ。

友達は二人
いつもバイトのメンバーが抜けると仕事の量を計算する理系の友達。
明るいけれどそれは皆に好かれたいためだと豪語する結構お調子者の友達。

かけがえのない支え
なぜならお互いに仕事を助け合っているから

学校も終り今日もバイト
仕事はカウンターの裏で調理、掃除、洗い物

タイムカードを切って厨房に向かうと

いらっしゃいませぇ~

自分の耳に甲高く響く愛想の良い声。
誰だろう、好奇心で覗くと
新しいカウンターの女の子
未だ馴れてないのか言葉遣いがたどたどしい

後ろでは先輩の女正社員が鋭い言葉で教えてる

こんな事も出来ないのかしら
全く元気だけは伝わるのにね。

自分の仕事に就かなくては
自分でもおいしいとは思う。
ここで調理する料理は、
ただ働いてる僕たちはその味をまもるためコストをぎりぎりまで削って働かされている

次の日も次の日も僕は働けど懐にはあまり入らない生活だった

ある日

休憩室で休んでいると
ゆっくりとドアを開ける音がした
見るとあの新人の女の子

軽く向こうから会釈をしてくれた

空気が少しほどけた
知らず知らずのうち話しかけていた

最近、仕事はどう?

えへ、未だ全然覚えなくて
わたし物覚えが悪くてさ
失敗したのは数え切れないくらい

今度コツを教えてあげるよ
こういう仕事は息抜きのタイミングが必要なんだ

ありがとう


あれ以来僕らは仕事に入る度にコンタクトをとりながら仕事をした
むろん男女間の関係はなく先輩と後輩それだけだった。

彼女の笑顔は晴れ渡る空のように曇りがなく
とても無邪気だった

声を聞く度胸が苦しいときもあった
きっと傷つくことをいつか経験するのだと

案の定
とても大きな失敗をしてしまった
1円たりとも会計に失敗しては苦労が水の泡な店

彼女は10000円という大きな額を気付けば間違って精算していた

落ち込んでるのかと思いきや

へへ、また失敗しちゃった
僕はただ見ているだけだった

ある日
同じ時間に入る時間帯なのに彼女はいない

先輩に聞いてみると

あぁ、彼女クビになったよ
中でも君には申し訳ないって

僕は憤った

何で止めてくれなかったんです?

そんなのわかるもんか
第一お前も見てるだけで彼女のこと避けてただろ

僕は自分を犠牲にするべきだった
蚊帳の外で彼女の痛みを見てみないふりをしていた

彼女の声は戻らない
ただあの笑い顔に出会うだけで幸せになれる
失って初めて気付いた事実
僕は心が痛いと感じた

猫の世界、犬の社会

君は近々クビか減俸だな。

社長直々にまたも怒鳴られた。
無理もないまた会社の命令に背いてしまった。
あの女性、パブリックロイヤルの五十嵐という女性に三年契約の更新をしてしまった。

お前、一体誰のおかげで飯が食えてるんだ

社長はもう止まらない
その日一日はさんざんだった。

一度会社を見に来てくれませんか?

そう言われたのは三日前。
私永物不動産の服部さん。
誘われるまま会社の前で待ち合わせ。
するとバイクのクラクションの音。

ここですここです。

ヘルメットをかぶっていて顔はわからなかったがバイクで迎えに来てくれた。

へぇバイクなの?

えぇこれならじゅうたいを気にせずにいけますから。

後部座席に座るとバイクに乗るのは久方ぶりだと懐かしくなった。

服部さんの会社はオフィス街から少し離れた物件。
ビルは三階建てだけれど床面積はある

ここの二階がオフィスです。
ドアにキーカードを挿して開けた。

観葉植物がいっぱいあり一人一人のスペースがゆったりとあるオフィス。
しかしなぜか人はまばらである。

あ、フレックスなの?

えぇコアタイムはありますけれど好きな時間に仕事をしてます。
応接室はこちらです。

窓の大きな部屋に入るとコーヒーが出てきた
一息ついて、

今日は仕事の話ではないんです
ただ我が社の雰囲気を感じてもらえれば

服部さんの指に恐ろしく巨大な宝石がちらついていた

その指輪・・・

えぇ報奨金で買いました。
結果を出せば個人の物ですから

ここは若い人だらけだけど、定年は何歳?

厳密に言えば自己責任で辞めてもらってます。
どんなに有能な人でもやはりお年を召されていれば若い人の差し支えになりますから。

俺は気まずかった
ただふんぞり返ることだけが自慢の上司
一体彼らに何を求めればいいのか?

あのこれからお食事はどうです?
タイ料理のお店でおいしいところ知ってるんです。

人間は最初に感じた直感を大事にすべきだ。
服部さんにあったとき
まるで甘い声を出して近づいてくる猫のような不思議な感覚だった。
呼ばないときにしか近づいてこない彼ら。
不安と好奇心が混じる複雑な気持ちだった。

2009年3月17日火曜日

Grand center

監禁されている程度なら未だましなのかもしれない
何処にいるかわからなくてもそれで良い
いつ何処でも見守ってるか?何人いるのか?
確かにわからないのは嫌だけどそれで良い

口を塞がれたまま目を開けたままあなたはじっと眠らされてるんだね



目覚ましの音が聞こえたような気がした
机の上でもたれかかっている
缶コーヒーが二、三本転がっているのに気付いた
そうかまた調べ物が一斉に来たんだっけな・・・・

仕事をやっているときが一番の生き甲斐を感じるようになってきた
ただがむしゃらだけれどひたむきな自分が何となく好き

もう自暴自棄に生きてきた時代と決別をして誰かのために生きてゆく
むろん自分が幸せになるために

調査する範囲が多岐にわたるにつれここら一体の歴史もわかるようになってきた

古来から異国の窓口だった時代
こうろかんや港町の名残がある

第二次世界大戦のとき斬首刑が行われた場所
在任や捕虜を生体実験した場所等

華やかな名残もあれば生々しい名残もある


そうそうこのレポートを書いている最中にも依頼人から電話がかかってきた

至急私の部屋からレポートを取りに来て欲しい

家の近所にある大学の構内
依頼人は教授であるからわざわざ研究室まで足を運ぶ
部屋では依頼人がほおづえをして待っていた

やぁよく来てくれたよ
最近仕事が順調のようじゃないか

えぇいろいろなチャンスだと思って思い切りやらせて貰ってます

辺りを見回すと相変わらず整頓されてない本棚に囲まれ少しいるだけで吐き気を催す
それくらい繁雑だった

お菓子 いろいろな人から一杯貰ってるんだ
好きなの食べてくれ
お茶を入れてくる

そういって部屋から出ると俺は机のレポートに目をやった

人造霊魂

昇らなかった魂の行方

処女受胎


宗教の造語のようなタイトルが並ぶ


確か人文科学の教授だったよな
しかし範囲が多岐に及ぶほど
自分の頭は支離滅裂になる
依頼を受ける度自問する
自分の専門分野を

そうだ自分が知りたいものそれは人間

今こうして生きている間にも何かに近づいている
一瞬だけ垣間見た閃光
追いかけてくる夢 予感 幻覚
全てを紡ぎ合わせ司る答えをいつかみたい

もどかしいが今でももがいている
だから夢に従った
逃げる場所がそこにしかなかった

傷というものは目に見えるもの感じるものがそうだと考えない
無意識に何処かにある自分の傷は広がり始めていた

もう十年以上もまえのこと


やぁお待たせ
さぁたべよう

颯爽と依頼人は戻ってきた
ほのぼのとした空気が包む

あは
光男(助教授)のやつ賞味期限が切れてる饅頭混ぜたな
なんか酸っぱいよな

俺は苦笑した

2009年3月12日木曜日

contemporary

むかしむかし体は不自由 でも豊かな国の王様がいました
王様はふとまちを見たときあまりに不自由な生活を強いられている人が多いので
免税をしました
特に貧困者に

国は弱体化しましたが国民の反応はよく王様は喜びました

ある日戦争で帰ってこない夫がいると民の声を聞き王様は徴兵を廃止しました
民衆は大喜びです
しかし国は誰かに守って貰わなくてはなりません

王様の国は貧困にあえぐ人々は未だたくさんいました
王様は切り詰めていた財産からそれらを細切れにして民衆に渡しました

しかしこれが失敗でした

民衆が今までの施しが当たり前のことだったと勘違いをして

お礼も言わなくなり
しまいにそれが無くなると
不満をどんどんぶつけてくるのです

怒った王様は
税収を確保するために弱いものから切り捨て金持ちを優遇しました

徴兵も容赦なく行い
自分の身すら守れないものは政治に参加する資格はないと選挙権を与えるのは
税金を納める男だけにしました

理想の国に近づいていたのにいったい何が悪かったのでしょう
行き過ぎた行政

また保護を正当な権利とはき違えた民衆に問題があった

モラル(隣人愛)という言葉は早すぎた時代だったのかもしれません

2009年3月11日水曜日

Rental happy

私は顔もわからない同級生と待ち合わせをしてしまった
どうしようかと少し迷ったけれど家族の人はみんな笑顔で行ってらっしゃいと促してくれた

駅のロータリー
未だ息が白くかじかんだ手を温めていた
そのうちに時間は過ぎてゆく
楽しそうに並んで歩いてる人たち
私は流されるようにひたすら待った
どれくらいたっただろう寒さで時間を忘れてしまった
意識が遠のいてゆく

突然背中をポンと押された

やぁこんなところにいたのか
僕は反対側の入り口で待ってたよ

突然出てきた彼は初対面とは思えなかった
まるで幼なじみが大きくなったような懐かしい感じ

温かいコーヒーでも飲んで暖まろうか

彼は優しく自分をエスコートしてくれた

ドーナツショップで飲むコーヒーはなんだか特別なことでもないのに
彼となら思い出に変わりそう

だってね彼は一時たりとも私から目を離さず笑ってるんだもん

窓ガラスから見える夜の雑踏

今度さ一緒に映画なんて行けたらな

映画なんていつでもやってるよ

ほらおまえと昔見ようと思ってた映画、もうロードショーは終わったよ

何処かの時計の針が終わりに近づいている気がしてきた
その時時間も空間も真っ暗になった

私は気がつくとICUのような部屋にいる
ハーネスを体中につけられ脳波のようなモニターが見える
天井にはレンズが大きく目を開けている

気がついたのね
よかったぁぁぁぁ

誰かが泣き崩れる声
しかしその後

残念ながらお母さん彼女の寿命は後数時間足らずです
最善を尽くし真の安楽死を目指します

誰の声だろう安楽死って私・・・・

するとまた景色が変わった
ドーナツショップで彼の前にいる自分だ


好きだよ
突然だけど
まえから知ってたみたいだけど
お互い素直じゃなかったからここまでくるのに時間がかかったね
プレゼント
開けてみてよ


小さな包みには今まで私の人生を記録した写真

大事にとっておくよ僕もその思い出とともに

私は泣いていた

待ってよ
私は思い出をこれからもずっと作り続けるよ

これからは僕たちと別の世界で幸せになるんだよ

私は力が抜けるのを感じた
そう
幸せを買ったんじゃない

幸せをみんなから貰ってたんだ

終り

2009年3月10日火曜日

僕はどこから来たのでしょう 

お腹いっぱい食べた
力いっぱい走った

昨日も今日も
でもあなたの前じゃないと意味がない

自分の幸せはあなたが微笑むことだから






暇だな
あれ以来仕事は全くといっていいほど入らない
少し自分のエゴを出し過ぎた

次ぐにつなげるにはどんな依頼も引き受けなくてはいけない
机の上の携帯に着信が入っている

実家から母親の留守録
食事はどうしてる?いつでも困ったことがあるなら帰ってきなさい

言葉では言い表せないが非常にむせた気分だ

泣きたいのに泣けない体質そんなものが宿ったのはいつ頃だろうか?

着信には未だメッセージがある友達の香織から
借金が増えているからどうか助けて欲しい

微力ながら助けさせて貰う

どこからかふつふつとわいてくる悲しみ、
自分の悲しみとはむごさとか無知とかそういった何も知らないまま起こしてしまった事件に起因している

しまいには可哀想になる

現実を疑っては見たけれど皆白々しいし

いいんだ今のままで勝って好き放題出来る今に不満を持ってるだけなんだ

少し脱力感を感じた
時計を見ると12時を回っていた
昼食の時間だ

近所の喫茶店でランチのセットを頼んだ
豚肉のしそ巻きにスープ
ご飯を思いっきりほおばりスープを流し込んだ

おかずを最後に残す癖があり、食パンも耳を最初に食べる

食後のコーヒーがたまらなくおいしく
これこそ至福の時だ

街に出ると肌寒い季節もそろそろ終わりに近づいている



家に帰ると体の力が何となく抜けてきた
軽く昼寝をする

また夢を見る
少しなれなれしい快活な女性
料理の材料これから一杯持ってくるからね

どこからだろう部活動をやってる女性の声

声だしていこ~


なぜ夢を逐一羅列する必要性があるか
それは予感と現実に密接に繋がっているから

今は愛情に飢えているのではなく一人になって行く疎外感が怖い

次第に孤立してゆく自分といつ出会えるかわからない予感めいた人物の間にいる

2009年3月8日日曜日

黒の女性

次の日会社で上司から大目玉を食らった
何のための営業なのか、もし今度背くような真似をするなら即刻首だと
当然といえば当然
会社の責務を自分の秤にのせて判断した
だが後悔はないもしもあそこで自分の正直な思いを具現化しなければ俺は一生
嘘つきになってしまう

綺麗な物はなぜか儚いしとげもある、
きっと私永物不動産も社長や上司が判断する余地がある

言葉は少ない方が良い
必要最低限の意思が伝わる

電話の留守録に
服部です今度お食事しましょう
都合の良い日を待ってます

なぜか商談ではないことが如実に伝わってくる

自分は今まで自分勝手だ、会社のことを思い返せば給料を貰ういがいなにものでもない
チームと一体感を味わう日もある
しかしそれ以上のものでもない
忠誠心というものがあるのなら一桁を切っている

なぜこんな自分でも働かせて貰っているのか
仕事が自分のためだということを誰よりも敏感に察知できているおかげかもしれない

ただ合理的にばかり走るのも嫌だ
時には感情をむき出しにしてたとえ同じ会社の同僚でも本気でけんかすることを恐れないで

日曜日
近所の公園でボーと歩いてると
偶然目線がかち合った
あの赤ん坊を押していた老人
多分自分の記憶をたどるとそうだ

今日は黒目がりりしい大きな犬を連れていた
やぁまた会いましたね
自分はいきなり声をかけられたような気がした

飼い犬は皆愛想が良い
幸せだからとか人が好きだからとかそれよりもゆとりが感じられる
人間はゆとりのある人でないと笑顔は生まれない
きっと今みたいなかつかつの生活の中では唯一笑顔というものには困る
他人に出せないのだから尚のこと苦手だ

朝、出勤するとまた上司から呼び出された
今日はこの会社と契約を交わしてくれ
80%の出資で完全に買収するとな

しかしこの会社は今までさんざん世話になった会社でもあるはず
特にうちが零細企業の頃から二人三脚でやってきたというのに

何か聞きたいことは?

あ、いえしかし向こうが断ってきたら
私たちは完全に向こうの財務はお見通しなのだよ
三年近くかかって骨抜きにした
頼むよこれいじょうの成長を維持するには拡大路線しかない

少しだけ複雑な思いだった
現に根回しでつぶすような会社はごまんとあるのになぜあのような
忠誠な会社を乗っ取るのか

会社の命令に疑問を抱くのは今日に限ったことではない、
だが・・・


6階建てのこじんまりとしたビルの一室
どんな言葉を吐けば相手が傷つかないかをじっくり考えていた

お茶をどうぞ
そういっていきなり目の前に現れたのは
少しふくよかで黒のスーツを着た女性だった

最初から満面の笑顔で瞳に今にも吸い込まれそうだった
女性はにこにこしながら書類にチェックを入れていた

今日は大事なお話なんですよね
笑顔がますます深くなった

俺はいつの間にか業績はどうですかと聞いてはいけないことを聞いてしまった

ええ
この世知柄厳しいものがありますけれど
私たちは最善を常に尽くしてますとくに昔からのクライアント様には

その話なんですが あの

自分の言葉が出かかった瞬間

その女性は日頃からお世話になっている貴社にはもう感謝の言葉が見つかりません
用件なら何なりとお申し付けください

俺はいつも笑顔な女性の目が一瞬光ったのがまぶしいほど痛かった

全ては悟られている
ならば話は早いのではでもそれではない

まっとうな人間は食いつぶされ残った人間が一つの頂を熾烈に奪い合う
こんな事で企業文化が生まれるはずもない


俺はこの女性の前だと嘘がつけない
だったら正直になる
もうお互いが助け合って生き残る時代は終わったんだ

疑心暗鬼なおれの表情を見て女性の笑顔は止まったままだった

2009年3月6日金曜日

FLOWER

朝、目が覚めると二日酔いとむかむかする仕事の記憶で非常に後味の悪い朝だ
何のことも決まったこともないこの一ヶ月

日課は毎週のように届く花束に水を差すこと
誰のはからいか、それとも導きなのかもわからないがこうやって
綺麗な物に甲斐甲斐しく尽くしている

それは花でもなくとも動物であったり人間であったり
優しくなれる自分を発見すると少し嬉しくなる

電話が一斉に鳴り渡るオフィスへ
仕事は当たり障りの無いように人を薦めること

少しネクタイが窮屈になってきた

上司から直々に呼ばれるのは久しぶりだ
あまり目を合わせずに

この商談を今日中に丁重に断ってくれ
我が社も長いつきあいだからというわけにはいかなくなった
相手はしがみついてくるかもしれないが

とてもいやな役回りだ


公園のベンチで500円で買った弁当を食べていると野良猫が数匹よってきた

猫は物乞いでもなく警戒でもなく日向ぼっこの最中に偶然で食わしてきた印象だった
おにぎりを一欠片ちぎって放り投げた
脇からたくさんの子猫が出てきた、兄弟なのか親子なのか上手に分け合っていた

その様を見て俺の会社にもあれくらい分別のある社員がいたらなと感じてしまう

商談は13時を回ってからそれまでぼーっと人間観察をしている
デスクには嫌というほど仕事の念が染みついてるからここがいい

○○さんですね
後ろから声をかけられる

え?

よかった人違いじゃなくて、私永物不動産の服部です
今日は時間が早いですけれどどうですそこの喫茶店で

商談には細身の白のスーツを着た若々しい女性だった

目は透き通った茶目で少しとがった目鼻立ち

きつい印象はなかったがこちらのペースをまもらなければ上司のいうとうりに遂行できないと思った

喫茶店で鞄を一斉に空け書類を広げられると
契約を継続するかしないかのサインを求められた
しかし女の説明では自分の会社は客観的に見るならこんな状態で
自分達が必要とされている会社俺の会社の未来を存分に鑑みて結論を出していた

その要求は今の自分達の最大でもなくそれ以下でもない

目を大きく見開いたその女の中には誰かを支えてる紛れもない事実があった

えぇ・・・あ
とりあえず半分 半分は飲みましょう続きはまた今度に

女は深く礼をした

しかし後から資料に目を通すとあの会社は財務から経理に至るまで綺麗すぎるほど社会に奉仕している

何となく自分と少しだけ共通する部分をあの女に垣間見た
それがきっかけだった

2009年3月3日火曜日

Version

ビデオカメラ買ってよ

だめよ真樹もうすぐ受験でしょ
勉強ははかどってるの?

追いかけてる物に夢中だ私は・・・
でも中身はいつだって空回り
好きなこともやりたいことも全部後回しにしてきた
だってみんな同じ物が欲しい
思慮深さが裏目に出た


違うんだ本当は自分にしかない物をほしがらない
見ようともしない耳をふさいで傷つくのを避けていた

いたずらに月日は流れる
もう若いからとか中学生だから親の庇護だからなんていいわけは通用しない

自分の足で進むんだ
今日から自分のやりたいことを追いかける


ねぇ今日子あのこまたあんたのこと見てるよ

私に?
何かの勘違いじゃない?

公園のブランコに毎日と言っていいほどたむろしている少女達
少しぐれた女子中学生の放課後の集いだ

あのこすこし変わってるよね
オタクなのに運動も勉強もそこそこ出来て

ん?タバコ吸う?
見かねた一人の取り巻きが気を遣う

私さぁ中学でたら働こうと思うんだ

え?どうして
楽しまないの学生生活

だってさぁみらいなんて今はどうでもよくて
それより明日の楽しさとか充実感が欲しいよ

今日子らしいよ

真剣なんだこれでも私
楽観なんてしてないよ
未来に期待しすぎてる例の優等生の将来だって


いつもこんな場所でよくたむろしてられるよ
あ~ぁここがお気に入りの場所じゃなかったら素通りなんてしないのに


真樹は心の中で思っていた
大体私のクラスは3つに派閥が分かれてる
勉強もそこそこ出来て未来のある優等生グループ

ある程度すれてしまって学力がおぼつかない不良グループ

そして私のように夢に必死で食らいついて物がおぼつかない白昼夢グループ

もうよせばいいのに先生からは進路のことで何度も忠告されている
母親は理解できないからいつも私にきつく当たる

夢はいつまで経っても腐らない大切な物
少しのことでおなかいっぱいになれるし私は幸せ


今日一つの進路を決めるためこの扉を開ける

映研

映画研究会の部室

きっと今よりやれることがある
飛び込んでみよう
高鳴る胸を押さえゆっくりと扉を開けた

探しているよ Wake me up



深い部分にたどり着いた
なぜか自分の過去がない場所へ
今まで一人だったって誤解してた
僕はあなたの体の一部だったんだね





nickさんメルアド変えたんだね

そう、迷惑メールが多くてこれは特別なアドレスだから

わーいこれでホットラインができた


ネットの人間関係は希薄だという
でも自分の言葉に仕草に一喜一憂してくれる人はいるし
ここでしか吐けない言葉だってある
実家に帰りつつここでいろいろなことをしようと思ってた

率直何かに疲れ果てていた
人間関係にいや現実に

トラブルはつきものだが
これは困るあれは嫌だそれの連続だった

モニタの向こう側にはちゃんとした人間が存在していた
しかしそれ以上の関係にはなりたくなかった

現実も同じだ
あまり自分の懐まで入ってこられると自分が都合の良いように作り上げた性格までが
分解されそうで

今は調べ物をする仕事に就いている
文献に載るような難しい言葉や意味をただ調べるだけだが
信頼とつてもそこそこ残ってた甲斐もあって暇になるときはない

時計を見ると13時を回っている
外に出て風を感じなくてはいけない
世間一般のずれと自分自身の常識のずれは予想以上に大きかった
むろんわかり合える人間もいたけれど
少数派で終わる
自分のやりたいことをしたければたくさんの人間に受け入れられる努力を惜しんではいけない


なんとなくね
つかみかけた現実

携帯の電話が突然なる
これは仕事の依頼だな

もしもし
あぁおれだ 調べ物をして欲しい

ちょうどこれから出かけるところだったんですよ

だったらちょうど良い
ここの丘陵地帯に誰かを祀ったお墓が出てきたんだ
それが生き埋めにされたままだったという

その呪いがここにあるっていうんですか?

いやその遺体は子供を返して欲しいと怨念じみた念を送ってるそうだ

子供?

私には詳しくはわからないある一定の人に語りかけているそうだ

子供を返してくれなければ私はいずれ復活する
社会にそれなりの報復を返すとね

よくあるカルトな宗教団体のもめ事じゃないですか?

君の名前もリストに挙がってるようだよ
その女の怨念に含まれる人物として

ちょっと待ってくださいよ
自分は未だ何もしてませんよ

いずれわかるときがくるかもしれない
頼むこの仕事を引き受けてくれ

その前にちょっとここらを散歩させてください
気持ち悪くなってきた

仕事は確かに重要だ、しかしこれは君の人格を見据えた賭なんだ

依頼人の話が終わらないうちに電話を切った

いつこの街に生まれ住むようになったか
そんなことは最初から誰かが決めている

時折見せる青空の下
雲がどんより浸食している様を見て
静かに外へと向かった