午後をちょっと回った喫茶店の店内
二人組の男女が顔を合わせて談笑していた
ねぇきいてる?もうさっきから目をそらしてばっかなんだから
でも就職が決まって良かったね。おめでとう。
今は自由業の段階だから何とも言えないな。
それに自分に才能のかけらなんてこれっぽっちもないし
嫌いなの?作家の仕事
物語を突き詰めていくと考えてはいけないことまで手が伸びて
それで追い詰められ生きる術を失ってしまう
私は追い詰められているときでもあなたが頭を抱えてるときも全て好き
だって走ってるじゃない、夢中な人って目に映るだけでもすばらしいわ
朝木は思い返していた親父の背中、いなくなった母、後妻の鈴
なんだこれは?
友達と一緒に作ったんです粘土の模型
近所のおねぇさんがモデルです
こんな訳のわからないことをするくらいなら読み書きをしっかりしろ
そう言うと父は粘土を処分した
教養は全て書物から入れなさい
父の教育観は押しつけがましかった
けれど尊敬していた
書斎で頭を抱えながら父はいつも何かをしていた
いつも毎週決まって父と外食に出かけるのが楽しみの一つだった
一緒に流しそうめんを食べていたとき
おいしいか?朝木
体をしっかり作るんだぞ
箸があまり進まなかった父
この頃から心労と結核を抱えていたと思う
一人の世界に入っているのは俺も同じだな
今現在、複雑さを増す社会と自分の関係
朝木はもう一度父親の残したものを確認しようと思った
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