2008年12月17日水曜日

Star dust

じゃ行ってくるよ
 

靴をしっかりとはき揃えて吉野は玄関へとたった

あなた忘れ物
今日のスピーチちゃんと推敲して書いたもの、忘れるんですもの

あぁそうだったな

それからネクタイきちんと締めてくださいな

吉野は妻の遥に向かい
なんだかんだ言ってお互い落ち着いてしまったな

息子の馨ももうすぐ就職するし

いままでありがとう
そして・・・

私にはあなたのような人を動かすような人間にはなれない
でもついてこれてよかった

どうだろう、もしかしてとんでもなかったとか?

私は辛いことにも痛いことにも慣れっこです
あなたをずっと守り通してきたわ

そうだな今日は特別な日
自分を偽りもなく出してくるよ

吉野は
昔を思い出していた



20を超えた盛り
吉野はマイペースで自分のやりたいことを探そうと思ったが
平穏な毎日は待ってはいなかった

大学生当時は天才プログラマーとして一部の人間に認められた吉野を
放っておく企業はなかった

いろんな企業から誘いがあり
吉野は提示された条件を見るなりすぐさま突っぱねていた

自分思いの通り開発をさせてくれる企業はなかったのである

しかし派手な企業は現れた

もし売れたのなら年俸一億はと豪語する企業だ

吉野は自分の理想を軍門におろし
金のために生きることを選択した

吉野が携わったプロジェクトは
大きかった

分野ごとに何セクションも用意されており何でも屋だった吉野も
専門的な開発の一部分だった

それでも吉野は結果を出した
大ヒットを会社は飛ばし一億とはいかなくてもいい給料を貰った

しかし捨てたはずの自分の理想はますます陰で膨らみ
吉野は葛藤のあまりか
夜は酒にひた走るようになった

寂しさもそれに付随してきた
人はたくさんよってくるのになぜか寂しい
自分が得た金はなぜか紙くずのように散っていた
何に使ったか分からないくらい自分の埋め合わせをしていた


夜歓楽街の店で吉野はまた独り飲んでいた
また会社の犬になればいい
明日になればまた忘れて仕事ができる

ねぇ
ねぇってばあそこにあなた財布忘れたでしょ

突然服装は派手だがもの悲しい顔をした女が俺の後をついてきていた

あぁたしかにそれは俺の財布だ

でしょ
うっかりしてるわあなたほんと

お礼がしたい今度そこの店で飲まないか?俺は・・・

それ以上は言わないで
今日は楽しませて貰うわ

女は遠慮はなかったが
笑顔がまぶしすぎるほどきれいだった
笑い声も店の中では隅まで届くくらい無邪気だった


それから俺は歓楽街に行くたび
女と待ち合わせをして散々すぎるほど
遊びほうけた

名前を聞くたびに教えてくれはしなかった

でもあなた寂しそう
笑ってるときでも女は俺の顔を放さなかった

私のこと都合のいい女でもいいよ
でも幸せにはなってほしい



女はまるで俺の全てを見透かすように涙をこぼした
あなたが失ったもの全てを私で代替するよ


俺は思い返した学生時代の頃
好きな女だった 沙織

当時は無我夢中でお互い歩み寄るゆとりもなかった
いずれ近くにいるだろうと楽観的だった

自分を大切にしてくれてることが頭になかった








そうだ
俺は沙織を失ったんだ

認めたくなかった
確かに自分のやりたいことを守るために犠牲にした

しかし今ある自分はそれすらも投げてしまった

時間と金で人生はできていると勘違いをしていた

理想を失った瞬間一気に自分は老いてしまった

情熱を取り戻したい
おもしろいことを真剣に突き詰めていたあの頃に

駄目よ

え?

あなたは今の会社があってこそ生きてるの

女は相談に乗ってくれるが

あなたのその寂しさにおびえてる姿がすき
人一倍強がりででも脆くて

あぁひつようなものがあったら何でも言いな

仕方がなかった
人をもののように捉えていた自分を見透かされていたようで

女は散々俺の元で金を使い
才能が枯渇した30代をめどに消えていった

聞けば財布のことも泥酔した俺から抜き取って後からついてきたという話だ
何のことはない出会いとは偶然ではない

もうここで俺の人生は終わったと思っていた
静かにただ静かに終わりをまとうとした


第三部へ

2008年12月14日日曜日

0番目に愛してる...

ねぇ笑ってよ
はは、笑ってる
ねぇもっとこっち向いてよ

ファインダーを覗く自分はまるで彼女に虜だった
僕は今夢中だ

もうすぐだ、自分の心を写真ではなく言葉で吐露することを
彼女の瞳を見つめる度に何か新しいものが見つかるんだ
もう僕は君だけの自分だから・・・



交差点を挟んだビルの一角
オフィスの一角では物騒な感じを漂わせる刑事がいた

朝は忙しいなぁ、君はどう思う?

何がでしょう?

この世には秤にかけられることと掛けられないことがある
それが人間の罪だ

私は・・・

こんな物騒な世の中だ君の無能さではいちいち説明しないとわからないのかね

それは・・

あぁごめん私の言いすぎだ
少し疲れてたのかもしれん
例えばこんな夢を見たことがある
悪魔がこの世に存在するならどんなにひどい容貌でもそれを受け入れることができる
しかし自分と同じ格好でしかもうつくしすぎる存在だったら・・・
こんな事件を見ててそう思うよもはや我々は新しい価値観を受け入れ作るべきだということを

私はそうは思いません
しばし窮屈な思いをしていた本田百合子は朝からいら立ちを抑えきれない上司
館勤にそう言った
これは人間がしたことですから
絶対に私たちでも理解できる
話し合いさえすればきっとこの事件は解決する

ふ~
犯人が捕まっても証拠がなければ埒が明かない
ここ最近は家にも寝泊まりできないがきみはがんばってくれ

はい



某、都心にある大学

学生はいろいろな趣で足取りをたどる
一眼レフカメラ、ポラロイド、デジタルカメラ、インスタントカメラ
いろいろなカメラを携えて
近藤治夫は悠然と校舎へ向かう
カメラはいろいろ試したけれどデジタルのような鮮やかさはないけれど
あの温かみのある現像が必要な感光写真に夢中だ
ポラロイドで昨日突然彼女の前に、彼女、立脇貴子に写真をとってもいいか聞いたけれど
私を撮るってまさか本気?
彼女が自分の美しさに気付かれる前に早く撮りたかった

じゃいくよ
真正面いや斜め前に浮かんだ情景をイメージしながら
光は彼女をやさしく包んだ
突然画面前面から押し出されてきた淡く白い繊細な肌を逃さずに描写していた
いいねぇ

ちょっと
自分だけずるいよ
私にもみせて

今度また焼き増しするから、その時また撮らせて
スカートもいいけれどたまにはパンツ姿も・・・

やだ、自分の趣味を押し付けないでよ
男と同じ格好なんて今はできないよ
そう、写真を撮ってる近藤君目が違ってるね
何かを捕えて離さない
ふふ、きっと他の女の子たちにも夢中だね

僕は写真魔だ
抑えきれない美しさを見ているとついつい狙ってしまう
立脇もまんざらではなさそうだった
大学の構内ではちらちらと寒気の厳しさが様を呈してきた
そろそろ冬になる
また新しい何かを見つけに

いつか続く

2008年11月22日土曜日

流星

社長ついに百万台突破しましたよ

そうか・・・よく今までやってくれた
何を言ってるんですか
みんな社長の陣頭指揮のおかげでここまでこれたんです

あぁそうか・・・

すでに白髪がちらほら見えだした50代の吉野は窓から遠い景色を眺めながらそうつぶやいた

あれからもう30年
感激するにもすでに精も根も尽き果てたといった感だ
ここまでの道のりは決して平坦ではない

何度も何度も訪れた悪夢のようないや今ではほほえみに変わるような苦労を思い返していた

何かおもろいことないか?

大学時代
勉強そっちのけでプログラミングにいそしんでいた吉野は
必死で面白いと感じたゲームをコピーしていた

そのゲーム、キャラが落とし穴に入り込むアルゴリズムが絶妙だな
まるで生きてるようだ

ねぇこっちのゲームはどう?
そう呼びかけた
黒縁眼鏡をかけた少し異様な出で立ちをした牧沙織は吉野のよいサークル仲間であった

向こうの学校から新しいソフトを借りてきたよ 
親友の神裕喜

悪いね二人とも

ねぇあなたの書いたプログラムテープに焼いて一度公開してみたら?
きっといい結果が待ってると思うわ
沙織は吉野に勧める

だめだよこいつが2年半を費やして書いた物だ今更公開だなんて なぁ
神はどうも保守的というかあまり成果を発表したがらない質だ

う~んでも
今までコピーをしてきたゲームに携わってきた世界にそろそろ恩返しがしたい
対価を求めずフリーでいいだろ


吉野はプロから見れば少々無駄の多い
稚拙な面を除けば荒削りのある光る素質を秘めていた
純粋に何かを追い求める
街のありとあらゆる場面に出ても吉野は無駄にしない常に面白いことを見つけ突き詰め
壁を作らなかった

その点あってかまちでかくれんぼをしていたわくわく感をゲームで表現できないかと
ドットのキャラクターを駆使しシナリオを書いてストーリー性を持たせ
プログラミングも簡素でもキャラを意のままに操れる操作性を実現し試行錯誤を重ね完成させた

ハイド ディバイド

タイトルは思いつきだが
敵キャラに見つからずにいかに美しく陣地を占めてゆくか
今までのパターンを踏襲した物だったが
ネットも普及してなかった頃全国から問い合わせが殺到した

その頃のゲームは今では考えられないくらいバリエーションも豊富で
新しいゲームをする度にそうか、こんな手もあったのかと驚く
小粒でもぴりりと辛いゲームにあふれていた

そんな幸せな時代
吉野は学校を卒業するとき

二人にこういった
二人とも研究室に残るんだってな
あぁおまえはどうする、神は少し暗い表情で尋ねた

しばらくは遊んで考える

就職はいいのか?

最近濁ってきたんだ自分が何で面白い物を作りたがってるのか
そんな調子じゃどこにも雇ってもらえないし失礼だと思った
それよりおまえ達そろそろ・・・

今まで気付かせてたのにごめんね
私たちもうすぐ・・・
沙織は神にぴったりとくっついた

そうか・・・
でもここでえたことは決して忘れはしないよ
特に沙織
面白いことはどんどん世の中に広めても何ら困ることはないんだって事を
それを教えてくれたね

吉野は出発した
ここからが本当の船出だ
そう自分に言い聞かせ

あらゆる波に揉まれることを想像だにせず

2008年11月10日月曜日

レンタルハッピー

少女は裏通りを抜けて
ある店へとたどり着いた

分厚いめがねをかけた受付の男にむかい
幸せ売って欲しいの

おやおや誰かと思えば未成年の子じゃないか
どこでここを知ったのでしょう
まぁいい
予算はどれくらいでしょうか?

これで
そういうと少女はどこから工面してきたのかわからない50万円の札束を出した

ヒヒヒそれっぽっちじゃ幸せどころか快楽も買えないよ

そう私には今これくらいが限度だよ

おっとこういうのはどうですあなたは幸せをどれくらいほしがってるかはわからないがお試しで
一週間いえ一日幸せを味わってもらいます

料金は?

そのときの気持ちでオーケーです

ずいぶんと儲かってるのね

気前の良さと言ってください

ささ早く家に帰って子供はもう寝る時間ですよ



私の好きなもの
人を観察すること
何かに追われながら答えを探すこと
欲しいものは奪えばいいこと
結局間違いだった

人が笑顔で通り過ぎる姿がどことなく羨ましい
自分がもしああいう立場だったら
一度でもいいから幸せになりたい

家に帰っても、両親はいない
二人で旅行中帰らぬ人となった

以来おばあちゃんと二人暮らしだ

玄関を開けると冷たい風が吹くはずだった


パン
突然クラッカーのはじける音
紙吹雪が私の前に舞った

おかえりなさい
にぎやかな人たちが私を迎えてくれた

ほらそんなにきょとんとしてないで早くこっちへ
女の人に誘われるまま家の中へ入った
何か飲みたいものは?ビールなんかマダ早いかしら


あなたは?
率直にきいてみると
いやだわ母親の顔すら忘れてしまうんですもの

あなたの実の親

はぁそうですか
ため息のようなものが漏れると今度は

おねぇちゃん写真撮ろ
今度は楽しそうに笑う少年がきた
写真なんて撮ってもらうの何年ぶりだろう

あらたのしそうね、自分より少し年上の女性が横に座った
お酒が入るとね少しやな事忘れちゃって
いつもあなたに頼ってばかりだったね今日はおめでとう

今日?

そうだった今日は自分の誕生日

しばらくすると自分の大好物のミートパイやオレンジケーキが並んだ

私が忘れてたもの
笑顔を楽しむこと

人が信じられなくなったとき裏切る側へ回ってしまったこと
迷ったとき簡単な答えで済ませてしまってたこと

きっと単純なんだ少しの勇気と優しさ
それさえ手に入れば幸せなんてそう遠くはなかった

しばらくするとお父さんらしき人が帰ってくる
よせばいいのに一気のみをして場を盛り上げる

おまえがこんな年になって前はもうこんなに小さかったのに
父は涙で自分の誕生日を締めくくってくれた

トゥルルルウル
電話が鳴った
はい あぁえぇいまたのしんでたところです
代わりますね

母はそういうと受話器を私によこした

あぁおれ
え?
俺だよ卓
同級生の

何のようなの?

電話でしか照れくさくていえないけれど誕生日おめでとう
そしてありがとう

もうつきあってもいい頃じゃないのかな俺たち

顔も見たこともない人にこんなことを言われてもピンとこない私

一度あって話がしたいんだろ?
そう、顔に書いてあるよ

卓は見透かしていた

駅のロータリーで待ってるよ
笑顔がみたいな

そういうと受話器は切れた

2008年10月30日木曜日

影と夢~芳春

出せない手紙を書いています
いつかあなたに出会いました
でも気付かずに過ぎ去ってしまいました
時が経ち私も歌を詠むようになりあなたの存在に気付きました

ようやくあなたの存在の大きさに気付いたのです
消えてしまったあなたの残した哀しさが私を今でもとらえています
すでにあなたの思うような人ではないのかもしれません

元気で過ごしてることを切に願うまでです
それでは


朝木
突然青年は呼び止められる

朝木じゃないか
もうどれくらい経つだろう・・・・

青年は呼び止められた人がいまいち確認できなかった

あぁ同じ文学部だった
ようやく同窓生の渡辺だと気付くと二人は誘われるまま喫茶店に入った
喫煙席で遠慮なくタバコを取り出すと渡辺は

でも驚いたな
こんなところを朝木がうろうろしてたなんて
ここの界隈で見聞を広めるため散歩してるんだ定職に就くのもなんだかふっついてて
それはこっちのセリフだよこんな年にもなっておまえはいいよなどうせ親父さんの財産があってこそなんだろう

あぁお父さんの事
もう死んだよ

え?
安らかな死だった
何も持たず何も与えず

親父の財産なんてとっくに散財してた

驚いたなあんなに親父さんを慕っていたおまえがこんなにも簡単に

残された
お鈴さんと二人三脚でここまでこれたんだ
これからも変わらないよ

そうか 苦労したんだな
おかげで金には困らない物をつかんだ
もしあそこで躊躇してたら手に入らない

なぁいい仕事があるんだけど
タバコを揉み消すと渡辺は話を切り出した
俺は今文芸雑誌の記者をやってるんだ
そこから投稿される俳句や小説、詩歌を選別して掲載してるコーナーがあるんだが

俺に投稿してもらいたいって訳か

そうなんだよ
おまえが文学部の中で選りすぐりの才能を持っていたことを俺は知ってたんだ
最近じゃこのご時世
文学に傾倒する人もめっきり減ってレベルが下がることを危惧してるんだよ

わかったよそう簡単に作れる物じゃないけれど考えとくよ

そうか頼むよ、答えはいつまででもいい
コーヒーはもう飲まないのか?
いやもうあまり依存したくなくて

朝木は考えていた
この長い十年間に自分に開いた穴は予想以上に大きいことを
文壇では才能をふるえた俺でももう十年だ
今更・・・

家に帰る途中庭の玄関で植木を手入れしてる鈴がいた
ただいま帰りました

あら早かったのですね
何か見つかりましたか?

いやぁ特に何も
すぐに食事の支度をしますね

ちょっと待った
これ

そういうと朝木は一輪の赤い花を差し出した
名前も知らないただ畑の脇に咲いてただけだけど

しばらくここに植えておいて欲しい

承知しました

二人が食事をしている最中
ふふと鈴が笑う
何かついてるのでしょうか?
いえ
何にもないふりをして実は何かあったのでしょう
それは・・・
誰かが見れば立派な夫婦にでも見えるのかもしれない
しかし事実上親子の関係
親父が残してくれたかけがえのない関係だ
いつかこの家を売り払い全てが終わったとしても

父さんの残した意志と鈴さんは・・・

なにやら玄関で騒がしい音がした

源藤さん、源藤さんのお宅でしょうか?

はい
玄関に出ると
郵便物です
こんな時間になんだろう速達だった

差出人は銀行から
封を開けると朝木は少し青ざめた

どうされました?
鈴が怪訝に伺うと

朝木は
親戚の会社が倒産した
保証人になってる俺たちは・・・・

まぁ
その場で絶句してしまいそうな額に鈴は震え驚いた
朝木は返す当てもない膨大な借金に
人生の大半を費やす側に一瞬になってしまった
そう感じたとき人生の歯車は動き出していた

2008年10月18日土曜日

深海

私の家族はちょっと複雑
姉妹二人の四人家族だけれど

ある日おねぇちゃんが彼氏とデートの最中
交通事故で光を失った

以来家族の空気は違和感がある

誰かを支えなくてはいけない事実
うちの家庭にはもの凄く重くのしかかっていた

おねぇちゃんの彼は目が見えなくなってしまったことに責任を感じ
プロポーズをしに結婚指輪を持って家にやってきた

光を失うずっと前はおねぇちゃんは輝いてた
性格も今よりずっとポジティブで一途でしかも情熱があった

プロポーズの言葉をずっと待ちわびていたのは家族ならぬお父さんだった
我が家にはほど遠いほどの両家の縁談だったから

春子さん
これ

おねぇちゃんは手探りで指輪を受け取るとまさぐるように自分の胸にしまい込んだ

おねぇちゃんは事故の手術以来誰とも口をきかなかった
身振り手振りで自分のやりたいことあげたいことをアピールする

指輪をはめなかったのはもう結婚に価値を見いだせなかったから
彼もおねぇちゃんに対する情熱は冷え切っていたのを誰よりも悟られていたから


プロポーズは失敗残されているのはこれからどうしたらいいのかわからない未来

私は学校が終わって一人考え事をしていた
バラバラになってしまった家族をこれからどう取り戻そう

いつも通り家に帰ると

お父さんとお母さんが仕事から帰ってくる

ほら、春子おまえの好きなまんじゅうと果物を買ってきたぞ
みんなと一緒に食べよう

お父さんはいつだって空気を無理矢理こじ開けようとするから余計に家族はぎくしゃくする

おねぇちゃんはいつも目を深く瞑ったまま少しだけ頬を緩ませる

お母さんはおねぇちゃんににてきたのかな
口数が極端に少なくなった

それもそのはず
お母さんがおねぇちゃんに依存していたこと
少なくとも教育熱心だったあの頃が全くのセピア色に変わってしまったこと

おねぇちゃん
あなたが心を開いてくれればこの家族はまたやり直せるよ
私はいつもぽつりと心で思っていた

おいしいか?春子
特別におまえの好みに焼いてもらったこのハンバーグ早く食べなさい


お父さんは家族をどう思ってるのかわからない

おねぇちゃんは家事が大好きだ
昔からおままごとが大好きだったから
得意に自分のことはこなしてゆく

何より気付いていた自分がこの家族からいなくなれば依存しているお母さんそして自立できてないお父さん
そして未熟な私

家族全員が光を失う

私はおねぇちゃんが元気でしかもよくおしゃべりをしていた時を最近よく思い返す
涙が出てくる

何でおねぇちゃんがよりによってこんな仕打ちにあったのだろう

人より真面目で真摯でしかも誠実な彼女が

そして今の彼氏、衛さんとの出会いがあった

恋をしていたとき
一番輝いていた

衛さんともあれ以来口を閉ざしたまま

今日はバラの花束を差し出しにきたけれど
受け取ると
臭いをかいで花びらを食べようとした

おねぇちゃんは理性や知性を失っているわけではない
みんなが愛想を尽かすのを待っている
だからわざと素っ気ない態度や予期しない行動をする

ただみんなもそれに気付いていた

今日も日暮れ
お父さんがお土産をお母さんが愛情を持って帰ってくる

2008年10月17日金曜日

パーマネントブラック

どうも宅配便です
朝から早々玄関で
身に覚えのない荷物が届く

あけると箱一杯に敷き詰められた薔薇の花
宛先を見ても誰も書かれていない
ただ自分の住所だけ
もちろん差出人の名前などもなかった

これは何かの間違いだろう
しかし開封してしまった以上受け取る以外ほかになかった
花を挿す花瓶もないことにちょっとむなしくなった

会社に出勤途中
定期がもうすぐ切れる寸前に気がついた
早いとこ買っとかなくちゃな

駅に着くと中はたくさんの人間でごった返していた
時間に余裕があったので自販機のコーナーで砂糖が利きすぎたコーヒー牛乳を飲み干していた
途中
足下にくすぐったい感触が残った
何だろうと下を見ると

黄色い帽子と赤い帽子をかぶった幼児が追いかけっこをしていた

きゃははははは、にゃははははは
幼い笑い声が響く
子供たちは夢中なのかこちらの存在はおかまいなしだ

兄弟なのだろうと自然にほほがゆるむと
しばらくその様子を眺めていた
この無邪気且つ甚大なエネルギーが今の自分にかけている

しばらくすると保護者のような人物が現れて
ほら、もう時間よ

と催促をし子供たちを無理矢理連れて行った


その母親の顔
どこかで見たような
いや、待てよどこかで赤ん坊を抱いてたな
しかし顔が妙に前より老け込んでいる
人違いだろう

その母親は自分の顔を見るなり何かに気がついたようで軽く会釈をして消えていった

電車に揺られると
一日の仕事が走馬燈のようによぎる
イメージにはほど遠いが
大体目星がつけられる仕事なんだろう
朝っぱらからどうにもならない考えばかりが浮かぶ

一度思い切り遅刻をして自分のポストがどれくらいの物なのか確かめたくはあった
誰かに簡単に代替される物なのか

本当にこの会社に必要とされているのか
自分の物語は30そこらで終わってしまっている
夢や理想を両手に持ち運ばなかった結果だろう
気づいてからではもう遅かった

薬院 薬院 役員
降りる方が済んでからご乗車ください

最近では幻覚にも似た幻聴にも似た
二重の意味にとってとれる物が増えた
例えば発音も同音だと何か違った外国語に聞こえる

染みもよく見れば何か違った物にも見える

ノイローゼでも入ったのかな?

帰宅途中デパートの総菜売り場でつまみと挽き立てのコーヒーを買った
アルコールは極力控えてるから
カフェインで脳内をコントロールする
こんな真っ白な空間でも欲しいものは欲しい
今は無性に笑顔が欲しかった
むろんそれは金で買った物ではなく
本当の意味での笑顔が・・・・

2008年9月29日月曜日

時代の半ばに自分はいた仕事も趣味も恋愛も総てが中途半端だった
だから人生は至って何もない自分だけの真っ白な世界だった

今日も一人、ぽつりぽつりと散歩に出かける。変わり映えしないのはきっと自分のせいなのに
これはきっと性だ
雑踏の真ん中で誰かの本音が聞こえてくるようだった
君が自分の足で変えなければ何もこない
愛も足りない、時間もない、情報もなければもう
誰かが自分のことを愛してくれるのをじっと待ってるそんなむなしい時間だった


ある日、銀行を横切り郵便局の前で赤ん坊の乳母車をひいている老人を見かけた
老人は自分をまっすぐ見つめ赤ん坊をいかにも大切そうに押していた

赤ん坊の顔はりりしかった、そのまま大人になった顔が想像できるくらい
知性も感性も赤ん坊に総て完成し備わっているような気がした
思わず大人になったとき自分の恋人にしてくださいと嘆願したくなるくらいだった

俺はもう30半ばだというのに

老人と赤ん坊はその後すぐに消えた
しかしその後不思議な世界の入り口へと自分は入っていた


大学の同級生だった人物から電話が入った
今日コンパするんだけど人数が間に合わないので君も来ないか

いつもなら断っていたが今日は時間もたっぷりある
いやカラオケだけは勘弁してくれるなら
そうこなきゃ

嫌な予感がしたのだが案の定自分はこの場でものすごく浮いた立場になっていた
大人になってもこんな空騒ぎだけはごめんだった

横の女の子にごめんと合図をして途中抜け出していった

夜の空気がすがすがしくたまには夜の散歩もいいものだと一人歩いていた
すると道ばたで赤ん坊の泣き声がする母親が必死であやしていたが
生まれたての赤ちゃんと言ったところだが
どうにも泣き止んでくれないようだ

思わず、大変ですねと声をかけていた
えぇいつもはおとなしいのに夜になると泣き出すんです


その子供はあど気ないかわいいくりくりした目でこちらをのぞくといきなり泣き止んだ
男の子ですか?女の子ですか?
男です でもよく間違えられて

はは、自分の昔にそっくりだ
でも人見知りが激しいんですよ、私と家族いがいなつかないんです

でも大きくなれば大丈夫、自然と社会のルールに沿ってゆくものですよ



その場で別れた親子に自分の姿を投影してしまった
その後親ですら信用できなくなった自分が心底嫌いだった

明日は仕事の締め切り日
心の余裕などそのときは生まれなかった

2008年9月5日金曜日

ゆかいな仲間たち

すいませんまた完結するかわからないものを挿入します
他のものも完成させたいのですが見切り発車ということで勘弁してください



なんだかなぁ
今日も手応えのない日だった
会議では結構盛り上がっちゃったつもりだけど志が少し足りない
仕事もやりがいがあるものなんて胸を張っていえるものじゃないし
いつまで独身なのって聞かれるのももう慣れたし
独り言が増えてきたよ

孤独じゃないのになんだろう胸にぽっかり空いた穴
誰が埋めるわけでもないのに何かに何かを求めてるんだろうな

5階建てのこじんまりとしたアパートに帰ると
1DKの8畳間には所狭しといろんなものが置いてある

ペットのオオクワガタ
愛猫のシータ
後そこら中にいる小さなゴキブリも

季節は9月だというのにまだ蒸し暑い
食欲も失せてテレビをつける気力もない
冷蔵庫を開けると昨日まであったような気がするビールがない

仕方がない隣までひとっ走り買いに行こう
部屋を飛び出したときは何も感じなかったのだが

酒屋に入ると友達の元彼女らしき人がキャンペーンをやってる
目を合わせないようにしたがつい
視線を元に戻した瞬間かち合った、あらお久しぶり


ちなみに友達とはすでに切れていたから
気まずいといえば気まずい

これ今なら試飲できますよ
ささ一杯どうぞ

進められるまま喉にグビグビと押し込んだ
この際味なんてどうでもよかった
確かに新しい味だね

でしょ今なら一ダースで安くしときますよ

腕がはち切れんばかりの荷物を片手に家に帰ると

自動ドアの前でなにやら騒がしい音がする
自分の家の前のような気もしたがはて
ドアを開けるといきなり飼い猫のシータが飛び出してきた、何かにまるで追われるかのように
少し部屋の空気が重たいな
電気をつけるとなんと飼育箱の中から数万円の価値があるオオクワガタが逃げていた

あぁ
何ともいえない焦燥感が胸を締め付けた
すると何ともいえない臭いが鼻の周りを包んだ

子供が大好きでしかも人それぞれの臭い

急いでトイレに行く便器には何もなかったけれどしっかりと臭いは存在する
一応水で流しておいたのだが

その夜はとりあえず眠った
しかしなぜかベッドの上は3人くらいすし詰めで寝てるような気分だった

2008年8月8日金曜日

スピードジャック

スタートダッシュに成功したセイは思い切り車体を傾け
インハイのコースに寄った
誰にもコーナーは譲らない
セイが所属するスピードジャックは
初級でもあり登竜門でもありここで基礎を学んでランクアップしてゆく
故にラフプレーが禁止されていた
後続車は指をくわえてみるばかり

セッティングがいいよ今日のマシンは吸い付くように走るぜ
セイは自分が今まで隠していた恐怖との葛藤から解き放たれそうだった
負けるのも怖いかといって事故を起こすのはもっと怖い
だがなによりも走る喜びをこのときは手に入れていた

後ろから何か突き刺すような悪寒を感じた
何だこの嫌な予感は
誰だ俺を見下してるのは

斜め後ろからフルスロットで接近してくる車体
セイは動揺した
体当たりは禁止のはずだったしかし
その車体はわずか数ミリの単位でコツンと車内に響く音を出させた
うわぁぁぁ
こんなところで終わりたくない
セイもまたフルスロットルでコーナーを曲がり切ろうとした

頭につけたインカムにチームの声が響く

おいセイ焦るんじゃないまだ後4周残ってるぞ

セイはその声で気を取り戻した
やがて直線に入り
気持ちが楽になった
最初のコースは曲線が緩く単調になりがちだったがセイはメリハリを付けた
無理なアクセルワークを避け相手の視界を遮るように運転した
第一ラウンドの結果は2位
いつもなら予選落ちだったが今回は次のラウンドまで進める
セイは最後まで残らないとここまできた意味が無い
そう思い足早に次のコースへ足を運んだ

黒い夢

同時進行で平行して別のもの語りを並べてゆきます
タイトルで続きをわかりやすく示す予定ですが止まったときは自然淘汰という事で勘弁してください



男は何かを待っていた
すし詰めにされる車体を目の前に遠くにいる誰ともわからぬものを
ここは感じようには生き地獄でもあった
無関心に足を踏まれ 謝りの言葉の余裕すら無く 行く当てもないように
男は電車に揺られた

つり革にもたれながら今日の終わった一日分の疲れを清算する
今は今日だけは目先の事だけに目を奪われないよう考えた

何かを変えなければいけない
だがその方法がわからない
仕事もプライベートもそして何より大切な家庭が蝕まれていた
生き方を根本から変えなくてはもうどうしようもない
しかし明日の仕事は大切なクライアントの取引でもある
特別な理由が嫌になってくる

ノルマは誰のためにあるのだろう
そのおわりなき土嚢のように積み上げられた壁をせっせと運ぶ作業に似ていた

静かな足取りで自宅に帰る
深呼吸すればするだけ溜息が漏れた

666

走る理由は人それぞれ

金と名声がついてくる
愛するもののために走る
自分の欲求に素直になりたいから走る
自分を探すために走る

2045年
人類の欲望は宇宙へと進出していた
既に地球外生命体を発見し文明も似たり寄ったりだった
人類は独りじゃ無い事を認識し
宇宙標準をこれから創りだしてゆく
その中で賭け事に熱中するのは全宇宙共通の概念だという事を知らしめた

中でも燦々と輝くギャンブルがある
666といわれるドッグレースだ
リニア式のホバージェットエンジンを搭載したビークルで
単純に一位を狙う
貧富の激しい宇宙ではこれらのレースに参加する事は大変な名誉でもあり
貧しさからのし上がれる手っ取り早い手段でもあった
しかし走りには才能が必要でそれらにふるい落とされ残る人間はわずか
ここに今日も走りを求めて集うものがいた

よう、あこぎに稼いでるかニッキー
へへっあんたにいわれちゃ適わないな
なぁDr.三冠男

うすぎたない路地裏で紙幣を数えてる男に話し掛ける

どうだ、俺の今日の走りは

ま、五分五分といったところだな
あんたに貢いだ金は全て返ってくる事を前提としてるんだ
あんまり冷や冷やさせないどくれ

俺は金のためなら手段は選ばない質なんでね
勝っても負けても報酬は同じなら裏方にだって回る

だがそれも今日で命日のようだ
賭博で八百長疑惑が発覚して
もうすぐ選手に査察がはいる

まぁ、別の道を探すさその時は
走りの才能は鈍ってない訳だし

あんたは本当に気まぐれやだよ、才能を持ってるのに金の前だと
本当に正直だ

今日はありがとよ

男のすぐ前方にはきらびやかな電光掲示板があって
今日のレース結果を逐一流していた

三冠男の名前の由来は当時最高峰と言われたスピードキングで
誰もがなし得なかった三連覇を記録した事からつけられている

当時のブライはとてつもなく早かった
鬼と言う言葉が相応しい走りをしていた

彼の才能はどこからきたのか
その努力がかすむほどの才能を有り余る当時の若さは十分に補っていた

しかし、時代は変わって闇の時代が訪れる事になる
ギャンブル性が強くなり八百長が横行しだ下のだ


それまでスター選手と言われた人たちがことごとく手を染めた
金と言う価値観の前では皆まっとうなんて存在しないのだ

やがて暗黒の時代が訪れるがそれを変えた男がいた

それも遠い遠い未来の事

三番レースがこれより開始します
選手のみなさんは召集所に集まってください

煙草にゆっくり火をつける中年の姿があった
セイは二流のすかすかのパイロットだった

タイセーのキャブが手に入ったぜ
これでわざとらしいラストスパートともおさらばだぜ
男の顔はうかない
しっかりしろよ
もうお前にはこの道しか残ってい無いんだぜ
まぁ裏もの同士仲良くしようぜ


そうだな三年も前なら祝福してくれる人がいた
走馬灯のように思いだした

すっかり変わったね前とは別人のよう
どんなに惨めな思いをさせても真っ当に生きてるあなたが好き
それなのに



あぁ、勝つためには変わるさ
どんな手段を使ってでも、それが駆け引きの世界で俺が学んだもの

人として大事な部分を削ってる
それでもいいの?

お前に何がわかる?

別れましょう、もうこれ以上変わってゆくあなたを見るのはこりごり

心は思う存分傷付いたがある程度の金は残った
これが俺の選んだ道だ悔いなど残ってはいない

選手がマシンに乗り込みます
場内は活気づいた


二つの気筒エンジンが熱気を帯びてきた
スタートシグナルが赤から青に変わる

よし ここだ

最初に飛びだしたのはセイの車体だった
うまい
今日のセッティングはいける
そう思ったのは両者だった

2008年8月4日月曜日

いつかは

気付けばそのまま寝てしまったようだ
筆を握りしめたまま床に伏せている

そうか俺はいつの間に寝てしまったのか
頭を上げると昨日完成させた自分の作品があった

濃縮した自分の感性は結晶となって自分にまじまじと迫ってくる

確かに見直すとやはりどこか稚拙で足りない部分が多い
しかし達成感はあった
誰にも胸を張って言える自分のもの

布をかぶせるともう少し仮眠をとろうとした

すると誰かが部屋に入ってくる物音がした
クラスメイトしかいないな・・・
むしろ今ではかけがえの無い人だ

ここなんだな

えぇ入って今では学校に行ってる時間のはずだし

あいつをここまで追いつめるのも時間がかかった
金も策も尽き果てて来週には放校処分だよ
くだらない夢と自尊心と一緒に社会から抹殺だ

でもなぜそこまで彼を
純粋に夢を追いかけてるのは人としてあるべき姿よ

お前も俺の男やめてあいつのもとにでも行くか?

冗談、辛気臭い夢なんてごめんなの

ははは、全く危険思想のある人間は叩いても叩いても出てくるな

突然何かが起き上がった

誰?
あなたもしかしてだって今日は学校じゃ

完成したんだ
いの一番に君に見せるつもりだった
本当さ
でも嘘、その優しさも言葉も偽善だったんだね
青年は静かに言った

おいおいお前なんかに本気で思ってたと信じてたのかよ
ま、これでも食らって楽になりなよ

そう言うと男は拳を振りかざした

当てるならここに当てるんだ
青年はカウンターで男の顔面に男が放った何倍もの威力のパンチをこびりつけた

クラスメイトの顔を見るなり悲しい表情で青年は部屋から出て行った

画廊に向かうといつもの少女
頬杖を付いて何かを待ってるようだった
青年が近づくと笑顔になって
両手を差し出してきた
そして

今は私、何も無いよ
君もそうさ

青年は予期せぬ言葉に

そうだよ俺は何も無いよ
でもいつかは・・・・

静かな午後に二人は自分たちをただ確かめあっていた

おわり

2008年7月27日日曜日

狂おしいほど愛しい痣

自分には描きたいものがある
決して自分の世界ではないのだけれど

模倣でも何でもいいから自分の達成感をはだで感じたかった

ここにきて一つの問題がおこってきた
絵の具
画材の費用が馬鹿にならなくなったのだ
絵の面積が広いと言う訳ではなく

自分のだきょうなく他人のいろをだすには
実験が不可欠なのだ

ただここまできて
経済的なもんだいで中途半端な結果になることは
余りにも無念だった

少年はおもいこしをあげるかのように決心をした
邪念を取り払う意味も込めて
まずは自分の身の回りにある絵を全部売り払う事を決心した
もちろん思い入れのある絵は多々あるが
今これから手に入れるものに比べればあとさきの事なんてどうでもいい

念には念を入れ
親が振り込んでくれた美術学校の授業料までも口座から引き落とした
あとでつかいこんだのがばれてもゆっくりかえせばいいんだ

むしろいまの目標にはどんな事でも犠牲にできる
うしなった事を後悔するのではという事が完全に欠落していた

なんか
頭のなかが妙にすっきりしたな
まるで空気をすうように絵を描く事が自然になってきた

どす黒い感情があざの様に客観的に見れる
そう感じるようになった

よし
駆けだしのパトロンの画廊へと足を運ぶ

そうですか
売ってくれるのですね
初期の丁寧でしかもあどけなさがこの絵には残ってていい
全部責任を持って買い取らせてもらいますよ

ただ一つお願いがあるんですが


言い値ではなく
本当にほしい人達に値段を決めて欲しいんです

それは・・・

オークションと言う事ですか?

いえ
そこまで

暫くここでかざってもらって
本当にほしい人が掲げる値段をこの目でみてみたいんです

こんな事をいっては気を落とされるかもしれませんが
あなたの画家と言う価値は全くの無名だから
投機の対象には全くならんと思うんですよ

だから
この絵が似合う部屋を

頭に少し血がのぼった自分にきづき
我に返り

いえ・・・このままでけっこうです
いますぐ現金に換えられますか?

もちろん
満面の笑みを浮かべパトロンは奥へ消えた

少し自分の欲をだし過ぎた
そう少し後悔し

おもったより少しいろをつけられたなというくらいの紙幣の束を
握り
画材屋へとひた走る

いつもとかわらない店内のドアを少しひらいただけで
強烈ないろが自分の目に飛び込んでくる
絵の具の種類がこんなにいろいろあるのかとその時初めてしったような気がした

自分には全く縁のないだろうと思われたライムグリーン?
いままでつかいどころが全く無かった


なんか
物凄くラグのような違和感を感じる
指で描いたらどうなるだろ?

どんなタッチにも変化する
指だと十人十色の技法

いえにもどり、とかくその日はいろんな手法にチャレンジした
またどれくらい時間が過ぎたのだろう


色を一生懸命ににじませている姿
少年は
確かめるように軌跡をなぞる

もう少しなのか?
自分でもどれくらいで完成なのかわからない

もうここしばらくは家を出たくない
完成してから外のすがすがしい空気を吸いたい

自分にとって絵を描く事は必要なんだ
それは将来の為でもいまの生活をまかなう訳でもない
この瞬間をいきるためにも

鋭い動機と共に指を繊細に動かし迷いを断ち切るかのようにラインを描いた

決まらない日でも明日になれば

もうすぐ美術学校を卒業する
なれしたしんだこの部屋ともお別れの時期が近付いてきた

もちろんルームメイトとも別れなくてはいけない
課題

あの窓辺に立ち遠くをぼんやり見つめている構図
下書きはようやく
決まり
あとはペイント
ここさいきんおかしな事が起きる
色盲ではないのだがこの絵を見るといろがイメージできなくなる


完成したんだね
後ろからポツリと呟かれる

ルームメイト・・・

いまじゃ
色彩すら漠然とし
随分と当たりさわりのないものを描くようになったもんだ

でも素敵よ
さいごまでちゃんと描き終えてね
中途半端は嫌いなの



ねぇ



これ描き終えたらその時は・・・


さて
色がイメージできないとなると
勝手にいろんな絵から当てはめるしかない
この色に近い色から創ろうか

いままで人の模倣にここまでエネルギーを費やした事は
いがいにも彼にとっては初めてだった

自分の満足の為にはどんな手法でも取り入れる
今はとりあえず完成させたくてしかたがないといった
迫真のようなものが宿っていた

課題
寝るのも食べることもおしいくらい没頭する
やっぱり俺は絵を描くのが好きだったんだ


どんなに気に入らない自分の癖のあるタッチも
この時は愛おしくてしょうが無かった

気が付けば
あっとういうまに時間ばかりが過ぎていた

改めてざっと見回して
まだこんなものか・・・こんなペースじゃ課題日に間に合わない


気分をどんどん入れ替えて
あたらしいやる気を掘り起こさなくては

また外に出よう
空気を外に求めるのは自分の世界観だけでは限界がきたと言う証拠

気分はどす黒く食欲もおこらない
ここ3日殆ど何も口にしてないのにだ

水の音がなぜか心にやさしい


気分的な麻痺状態
取り憑かれたように自分の絵にみいってしまった

とりあえずスーパーで食材を買おう
何とも言えない疲労感が背中から襲ってくるのを感じ一人ため息をついていると

後ろからつんつんと背中を突かれる
紙袋をもったあの少女

片手にりんごやバナナくだものをはち切れんばかりに紙袋にかかえ
自分の顔を怪訝そうに見つめる

今日の身なりはきちんと整えられていた

なんだお前かよ
今日はひどい顔をしてるだろ?
さいきんようやく創作の楽しみがわいてきたんだ
もう当分は迷わなくてすむ

少女はしまったというかんじの表情見せ
紙袋をドサっと落とすと
足早にさっていってしまった

果物?が袋からこぼれ落ちる
オレンジ?

ころころと自分の前に転がってくると

なんともいえない安楽感が少し自分の体をほぐしたような気がした

2008年7月16日水曜日

星になった空気達

雨だ
こんな日は何処へにも行きたくない
ルームメイトは青年の冴えない顔を見て
あぁあいつになったらあの絵を見る事ができるのかな
もしかしたら未完のまま私達離ればなれになるのかな

完成するさ
今までがそうだったんだ
強い意志が青年にみなぎった
またペンを取る


顔がぐしゃぐしゃになって泣き腫れたかおの絵を構想してみた
いままでにない他人に流れるような不快感を与える構図だった
こんな絵誰が飾りたがるんだよ

内なる声のもとすぐに却下になった
今必要としてる絵はなんだったんだろう
外の空気を呼び戻さなくては始まらないと外出した


街で買い物をしていたら突然土砂降りにあった

当然雨にそのまま濡れ急ぎ足で家に向かう

止まり木にまたあの少女

2度とはなしかけまいと心に決めていたが
なぜか体半分ほどのスケッチブックを大仰に開き何かを描いてるようだった

こんな天気にいったい何を?

さすがにこっそり覗き込むのは抵抗があり
やぁ、
気付く範囲でこっそり注意をさそう

意も介さないまま接近する
風船?


こんな雨の日で周りは街路樹だらけなのに
無機質な風船を何重にもかさねている

これはむしろ周りを見てスケッチをしてるのではなく
雰囲気を察知して描いてるのだろう

おもったより機敏な鉛筆の動作はまるで何かを封じ込めるような
急いで空気を真空パックにでもしてる雰囲気だ

人がこうやってかいてるすがたをまじまじと見るのはその時が初めてだった
自分の描くスピードがどれくらい遅いかがわかる


少女は突然動作をピタリとやめ
自分の斜め前を察知した

やっぱり失語症なのか

口を2〜3度ぱくつかせた

ごめん

いや自分のまちがった解釈かな
多分そんな感じの言葉を自分に投げかけたような気がした


でも
うらやましいよ
俺は自分の部屋にこもってしか鉛筆は進まない・・・
たまに外の空気を察知して描こうと思うけど
何も感じない
いや何を描けばいいのかわからないんだ

少女は耳に話を入れながらも鉛筆をとめなかった

風船?
深くは考えないようにしたが
外界との繋がりをそう表すのなら
自分にとって
環境って何だろ

その日は
小一時間ばかり描く姿をずっと眺めていた

波のない海原の前で

場面
寝坊した
急がなきゃ
青年は身支度をすると急いで美術学校へ足を向けた

講義は既に始まっていた
堂々と教室をはいるわけにはいかず申し訳なさそうにこっそりはいる
また君かね
教授は青年を発見するなりため息を漏らした
この際だから言っておこう
好き勝手に自分のやりたい事だけをやることはすごく遠回りだ
君は自分の才能を正しい方向へ導くためにこの学校へ来たのだろう
説教は続いた
青年はこの日はテンションが下がりっぱなしだった
自分の画にはまず深みも教養も開かれた感性も無いただのおたくだと
一部の人間たちに認められて何が楽しいのかと
最後に言われた

当ても無く今日はピリピリした空気で街をさまよった


あの画廊を見るとまたあの小汚い少女
素通りしたかったがまるでくいるように自分を見てる

なんだ
またいたのか
こんな所に座り込んでちゃ
物乞いかホームレスと勘違いされるよ

まるで耳にはいってないようす
焦点はいくぶかさだまってるように見える

青年はちょっと気を許して

それよりさ
俺の絵見てくれる?
こんな俺でも今度の作品は自信があるんだ


にゃん
と静かにはねのけられた

なんだよ
少しくらい真面目に見てくれたっていいだろ

まるで申し訳のないすました顔

理不尽な態度に青年は立腹し

今度立ち止まっても絶対に無視しよう
そう心に決めた


日常というのは常になんかの理不尽な事の連続でもある
ほんのささいな事でも悩みに昇華される

描きたい事
ルームメイトの心をいろんな側面を考慮して
何度も下書きを繰り返した

上手に描きたい
目標とする画家がいるからこそ
デッサンの数は日に日に増えてゆく
認められれば
パトロンのいこうに関係なく自分の好きな絵がかける

もちろん壁画のような無謀な大作を構想することもあった
しかし到底自分には技量がたりない

自分のやってること
したい事
理想

それらが複雑に折り重なりしだいに鉛筆が鈍ってきた

ただ
何となく泪がこぼれる日々
何も手に着かない日々がどれくらい続いたのだろうか?

少年は
画廊に自分のやりたい事をもう一度確認をしにいった

先客は自分一人
感じのやたらのいい眼鏡のおばさんなのかおねぇさんなのか
やたらにアニメ調の声で
どうぞごゆっくり

気が紛れるからやめてくれよと懇願したかったが

とりあえずかざってある絵に注力してみる

さすがにプロの絵だ
この流麗な線とタッチ

繊細な仕上げ

到底自分の画風では真似できないだろう

しかしこのモデルの媚びまくった表情
自分に投げかけてくれるのは安楽しかない

この絵いくらですか?
率直な疑問をぶつけると

その綺麗なおば、おねぇさんは
自分が予想する桁の3桁違う値段を自分に突き付けてきた

おいおい冗談でしょ?
そんなことばも

にこにこして平然なおねぇさんの表情には
絶句にしかなかった

しばらくして
ふぅ〜
大きな溜め息が漏れる

現実
その2文字だった
呆然と入り口の前に進んでゆくと
何か柔らかいぶったいにぶつかった

あの汚い少女だった

なんだ
客ならもっと身なりをなんとかしろよ
ここは個人のプライベートな空間だぞ

自分の理不尽な感情を偶然と出くわした人間に当たってしまった

自然と後悔はなかった

少女は
まるでまた何かに叱られるような表情
また怒られたかなって言う表情
複雑な眼差しで青年を見る

かまう事なく振り返る事なく家路につく
一人つぶやく
現実なんて所詮こんなものなのさ

2008年7月15日火曜日

賽を投げた少年

いったん保留をして別の物語を入れます



残念ですがそのお誘いお断りします
凛とした瞳を持った青年が意思を頑に突き通している

悪い話じゃないと思いますよ
あなたのその未完だが初々しい感性 
将来芽が出れば大成は間違いない

いや、自分には此処を離れられない訳があるんです
テーブルに目を落とすとそこには数々の自分の作品が散らばっている

 もう一度考え直しておいてください
答えは卒業して暫くしてからで結構ですので


自転車で帰る途中街は色づき始めていた
へぇー
こんな所にも新しく画廊が出来たんだ・・・
今の俺にはもはや関係のない事だな

郊外にある自宅のアパート
といってもルームメイトがいた
しかも異性の

あっ帰ってたの
女は青年の顔を見るなり何かを察したようだった
また誰かを困らしたんでしょ?

少しためらいがちにうつむくと

ちょっといい?
今度の新作下書きだけど見てくれる

・・・
これもしかして

うん

あたしこんなに純粋でも可愛くもない・・よ

それでいいんだよ
自分の勝手な心の目で描いたんだから
でもどんなポーズかも表情なのかも明確にわからない
ふさわしい構図
それぞれに合ったもの僕はそれを探してる

それと絵の具の量を大胆に今より減らして描こうとおもうんだ
余計なものをいっさい減らし
素材のよさを如何にシンプルに映し出すか


場面
街路樹の画廊の前


焦点の定まらないうつろな目をした少女

なんだろうここには入れないくらいみすぼらしい格好をしているけれど
少女に向かって危険だからどいた方が良いよと注意すると少し反応した後
口を必死でぱくぱくした
君もしかして喋れないの?

少女は声にならない声帯を思いっきり掻き消すかのように
ささやいた

わたしにもがざらせて

えっ?
でもここの画廊においてある絵はみんな売り物だから
余程売れてない人いがい自分の好きな絵は飾れないよ

それより君がどれくらいの実力をもってるのか

鞄から無言で額縁のようなものを忙しくとりだし
絵を押し付けるように見せた

抽象画
いろんな形の四角形だけで構成された構図
その透き通った質感と骨格感は
まるでセミプロが描いたような完成度だった

上手いね
これ本当に君がかいたの?

・・・・(気まずい空気)
もう行かなくちゃ
これ・・よかったよ、みとめられるとはおもう
お世辞なんかじゃないから・・・


家に帰ると夕餉の香がしてきた
あぁ今日も一日お腹が空くくらいデッサンをしたり動き回ったなぁ
ルームメイトと食事をする
なぜか淡々としているけれども恋人でもましてや親友でもない
たまたま学校に進学する途中で
都合が付いただけだ
今日も見てきたよ
きれいな木立だった自分の手が止まらなくなるくらい夢中で描いてたよ
いいわねあなたは相変わらず少年のようで
そう含み笑いをすると二人の夜は更けていった

2008年7月13日日曜日

夕飯

最近夢を見なくなった
というより忘れる事が本当だろう
夢がもたらす刺激は仮に崇高な学者が唱える画期的な研究結果でも敵わない
リアルなのに現実ではない
自分の世界なのに手を伸ばせば消えてしまう
仮に夢が他人とシェアできるのなら間違いなく録画して何度も鑑賞するだろう
もしかすると自分の夢の刺激がたまらなくて中毒状態の人間も出てくるかもしれない

お腹が空き
近くの弁当屋へ行く
すき焼き弁当が無性に食べたい
正直に自分の腹に従った

テレビをつけると今度はマルチに活躍しているアナウンサー
教養も美貌もあってなおかつ奥ゆかしければ素敵な人に見える

以前仮面という作品を見て
あこがれの同僚も同じように仮面を装着していたオチは陳腐だが結構あり得るんだろう
と思い切りこき下ろしてしまった

しかし地がここまで無邪気と紙一重だといろんな意味で羨望のまなざしだ

火があまり通ってない豆腐を噛み砕きながら
自分の隣に座る女性はまずいないそう思い
静かに眠る事にした

ただその時から変わったある事を強くイメージしながら眠る事にした
毎晩毎晩何度も何度も

2008年7月12日土曜日

彼女

テレビをつけるとまたあの子が笑ってた
一方的に知っているだけなのに
見つめられるとなぜか表情が緩んでしまう
あぁ歌も歌ってるんだ ・・・へたくそだな
しかし彼女はなぜかテレビをつける度自分の前に現れてるようだった

人と会うのが億劫になればなるほどこういう割り切った出会いが恋しくなるんだ
理由など本来無いのだ
好きになるのも出会う事も

カメラを持って外に出た
できるだけ自分が美しいと感じたものを真空パックに入れるかのように保存した
ファインダーをのぞけば視界は悪くなる広角で撮ってもあの迫力は再現できない
ならば意思を込めよう
自分が一番見せたいものを明確にして
そのうちそれらをネットで披露する事になる
反応は皆無だったしかし確実に何かに衝突していた

美しいものに触れたい欲求
誰にも止められなかった

2008年7月11日金曜日

不断

朝顔を洗ってると
目がすごく充血していた

連日のパソコンのチャット漬け
徹夜をする事も珍しくなく
馴れ合いじゃない本物の討論をしていた

不特定多数といっても会員専用だからおかしな事にはならないように
なるべくキャラを作っていた

そのうちいろいろな部屋へお邪魔をしたが哲学や男性学女性学
いわゆる恋愛に関しては答えが出なかった

むろん後でゆっくり考えれば良いだけの事
今悩むのは自分の言葉で悩みになった人が少なからずいる事
他人の頭に土足ではいっていた事を知り
なるべく事を荒立てないようにした


テレビをしながらネットをするうちにこれらが融合したらどんな世界が待ってるだろう
好みや価値観で人の流れは大いに変わってくる
もしかするともしかして
自分が普段からぶら下げている問題を答えてくれる人が大勢集まるような
一種の期待をして待つ事にした

2008年7月10日木曜日

ハローマム

可愛いね
お人形みたい
もっと笑って
君がいると癒されるよ

いろいろな人達が私を褒める
でもなぜか虚しい

お〜い出番だぞ
今日もしっかり笑えよ
お前にはまだしっかり稼いでもらわないといけないからな

そう私に商品価値があるかどうか
一番大事なのはそこ
だから聞こえない振りをしていた
怖かった
自分を舐めるように見る人達は
私が後どれくらいの価値があるのか目利きをしているのだから

私は一応舞台に立ってる
踊りながら時に歌を歌い
愛想をふんだんに振りまき
お金を創りだしてゆく

体はなぜか精神と心が分裂しそう
割り切ってるつもりがなぜかくるしい
自分を本当に見てほしい
誰かを求めてる
寄り添って
静かに私のそばへ








オゥ元気
nickさん久しぶり
変わった事はあったかい?
う〜んとね・・・・

馴れ合いってこんなものかと浅薄に思っていたけれど
意外に淡々としていた
飛び込むのが最初はいやだった
しかし会話を求める度に積極的な自分を確認できる
いやな事も多いけれど
ネットはいろいろな機会が用意されている
ただ者ではないなと思う人もいればなんて酷いことを言う人なんだ
という人もいろいろだ
そのうちにもうこれ以上現実に目を背けたくないと悲しむ女性が現れた
何をしているのかはわからないけれど深い悲しみの仲
自分に鞭を打ってるのだろう
悲痛な叫びだった
自分もそんないろいろな人達を見て
客観的にしか自分を披露する事しかできなくなりつつあった
それには現実を塗り替えるしか方法は無い
そう言う意味でもまだ自分はぬるま湯の中でただ見守るしか無かった

2008年7月9日水曜日

後悔

緊張は最高潮に達していた 
今まで通り行けば勝てる
そう言う確信をもとに全身スーツに身を包んだ

またしても並ぶと体格差がもろに出る 筋肉も背もみんな劣ってるけれども俺には武器がある
スタート台に立つと下を見るのではなく遠くをしっかり捉えた
負ける気はしない
号砲が鳴る
なるべく勢いよく着水するのではなく遠くへ飛ぼうと思い太ももに思いっきり脚力をかけた

ゴボゴボ
水の音が耳に響く
そして俺の武器入水して潜水をなるべく短いインターバルで足をストロークさせる
長時間する事は今までの常識では無かった
自由形では
ドルフィンキックは体力の消耗をどちらかというとおさえるのかもしれない
30m付近で顔を出す既に一位は5mライン付近まで進んでいた

体は決して柔らかくないのにドルフィンで進んでる時は水に全く逆らわないような気がする
50の折り返しここでもドルフィンキック15m進んでいよいよラストスパート
今までほとんど水を手でかいてないので全力で疾走する

ライバルはまだ見えない
5m付近になってようやく足を捉えた
だが届かなかった
ラストスパートが足りなかった
コーチから序盤から気持ちよく潜水のし過ぎなんだ
最初から相手の事など考えず全力で潜水なり腕を振れ

距離は縮むとは思っていた
自分の実力ならしかし一番にはなれない
誰もやらない常識をやってみても勝てない
俺は体の衰えをそのうちに思い知り
手遅れだったあの勝利への余韻へ二度と浸る事は無かった






音楽を聴いていた
とたんにいろいろな情景が浮かぶ
懐かしい曲10年前以上の自分がまだ青かった時代に貪っていた曲
テレビで視聴する事も今はでき
プロモーションビデオと呼ばれる販促用の映像をそのまま流してるだけなのだが
カット割りが早く結構自分の映像に参考になる
というのも映像をもとに昔は構築していたから
飽きっぽい自分、あきれるくらい気が多い自分
何事にも限界がある事を信じていた
何かに刷り込まれるまでは

2008年7月8日火曜日

奴隷

さぁこれを使いな
そう言うと一粒の種を老人は自分に差し出した
これを齧れば俺は軽い興奮と覚醒で志気が上がる

さぁ今日もいってこい
良いな生きて帰るんだぞ
背中をポンと押された

進めば強烈な光を感じる
激しい喧噪の中俺はリングに上がる

相手は自分より20センチも上背があってニタニタと自分を舐めるように眺めてる
ゴングが鳴る

相手はジャブを出してきたと同時にハイキックを自分の頭上に出した
多分後頭部に当たったのだろう一瞬目の前が真っ暗になった
しかし痛みというシグナルはこのときは無い
さっきの種名前は知らないが体の全神経が麻痺する
相手がばてるまで好きなだけパンチを食らう
そしてフィニッシュはカウンターでボディブロー

相手は苦悶を浮かべながら倒れた
これでよかったんだ俺はかすかに響きだした痛みに目覚め
静かに倒れる

終わる
終わるんだ
そう思うと最前列の席から誰かが呼びかけていた
目の前には妻と子供
必死で涙をこらえて自分をここから解放したがっていた
ごめんな幸せをも見届ける事ができなくて
生まれ変われたら今度は







工事が完了しました
元々集合住宅なんで料金は結構リーズナブルですよ
そう言うわれるまま俺は自分の部屋にケーブルを引いた
早速パソコンを立ち上げて
インターネットをブラウズする
最初は自分の好奇心を満たすものを主流にしていたが
ある程度行くと質問がしたくなって掲示板にいった
そこは会員制でハンドルネームが必須だった
nick 日記をもじったこの名前
今日から俺はここでいろいろな人とコミュニケーションを繰り広げる
人を信用できたのだから易いものだと思った
だが現状は少し違っていた
全てを見下ろす何かに自分は感づき始めていた

2008年7月7日月曜日

惰性

起きて
ちょっと
大丈夫


誰かが目の前にきた
コップ一杯の水を持って
静かに自分の前に差し出した

そうか俺は脱水症状でここに倒れていたんだ


でもなぜここがわかったんだろう一人になりたくてここで迷っていたのに

あなたが死にたくないってうわごとのようにいってるのを聞いたから

確かに死が怖かった
何のために生きてるいるのか
生きてる価値はあるのか
一番考えては行けない事を真剣に考えて

フェードアウトしてゆく記憶も存在も
ただ魂のよりどころさえ求められれば・・・・










朝よ
いつも通り親に起こされる
汗がべっとりと首の周りを包んでいた
シャツを着替えようとすると体から血の匂いが漂った
確かにこれは・・・・
シャワーでしつこく落とそうとしてもとれなかった


実家を行ったり来たりするようになってから自由な日々を送る
昼間で寝てる日もあれば
一人暮らしの家に帰りやりたい事をやる

街は二つに分断され
自分のスペースが完全に孤立してしまった
玄関のポストをチラシ覗くとネットを接続していなかった事に気付いた
よし、ここらでやってみよう
そう思い工事を申し込んだ

2008年7月6日日曜日

自我

やはり今日も警戒されている
顔はやつれてきているのに気付かないのか
いくつもの命を犠牲に生きてきたけれども
既にわかった
断末魔の悲鳴
見ただけで恐れるような瞳

もうこれきりにしよう
命を奪うのはこれきりにしよう
俺は自我を持った肉食獣

たまたまそういう風に生まれただけだよと言ってくれた
あの補食した動物

変わってしまった何かが

似てる奴らはみな去っていった
自分の変わった価値観で孤独になるよりは良い
皆生きる事を望んだ

徐々に弱っても良いここで後は考えるだけだ







気がつけばいつもと違う部屋で寝ていた
道理でいつもとは違う夢を見るわけだ
そうか俺は実家に帰ってたんだ
香織からはあれから音沙汰が無い
言いたい事をぶちまけて絶交するんだろうと覚悟はしていたのだが
家を出て
白昼堂々と手をつないで歩くカップルを見て
女友達から恋人に発展する事はまず無かったなと後を振り返った
大切なのは彼女と男友達だ
歳の差に差異はつきものだけど
生きてる分自分をある程度把握できるだろう

食生活が一人暮らしだからでたらめになった
だから母親の手料理で精力をつけようと戻っていたのだが
つい泊まってしまった
家に帰るのが少し楽しみになったなぜか新鮮で待遇もいい
毎日とは言えずとも親の顔だけはしっかり確認すべきだと思った

2008年7月5日土曜日

本編

どんなに離れていてもわかるものだよ
本当の孤独とは注目されつつ誰とも相容れない事
だがあなたはきっかけをくれた
名前を付けてくれた 
後はあなたの腹の中から這い出る事だけ





モカをください
おかわりは自由で

ここは喫煙席ですがよろしいでしょうか?

えぇ結構です
好きなんですこの匂いが

30代半ばの帽子を目深にかぶった女性
誰かを待つわけでもなく途方も無く周りを見渡す

皆談笑を繰り返してるようでとても平和だ

徐にメモ帳を取り出すと女はある事を書き始めた
今までの男の遍歴と何やら化学式のようなもの
女は相関図のようなものも付け足した
女かしらそれとも男かしら
独り言を言うと
静かにお腹をさすり新しい生命の誕生を優しく確認した

すると突然喫茶店が殺伐とした雰囲気に包まれた
おぉここに真理子はいないか
男は突然怒鳴ると
真理子の席に行き
裁判所から通達だお前今日から拘置所行きだぜ
真理子
彼女は理由を確かめるかのように強い目で睨んだ
あれだけ倫理を冒涜したんだ
終身刑にでもなりゃ良いんだ

真理子は静かに席を立った
取り調べを受ける覚悟を既にしていたかのように

そして裁判で
泣きながら彼女は訴えられた
この女に俺は人生をめちゃくちゃにされたんだ
人類が2000年以上かかって手に入れたものを簡単に奪った
もう後には誰も続くものはいない

彼女は省みる事無く実刑を受けた

その後彼女は女の子を出産した
しかしその直後に男の子を産んだという噂も流れた
双子の兄妹は
身元が分からないまま消えていった
女は深く悲しみ社会からいつの間にか消えた



ポーン
また夢か
インターホンの音で自分に返る
1kの部屋にはまだ真新しいテレビがある
床の上にはラップトップのパソコン
机にはデスクトップのパソコン
皆同じに見えるが役割は違う
趣味と仕事と社交辞令、癒し
話題を作るためにテレビを後ストレス発散とイメージを
趣味で文章を音楽をやるためにラップトップ
ビジネスソフトを走らせるのにデスクトップ
こなすには必要だった
生活できなければ趣味も話題も作れない
腐った生活でもメリハリを付けるように汗を流すようにしている
外に出て軽いジョギング
しばらくして近場の喫茶店でミルクコーヒーを飲む
狭い喫茶店だがそれがまたよく煙草のほのかに染み付いた店内がなぜか懐かしさを誘う
帰っても何も手につかない時そんなときは頭を空っぽにできるテレビを見る
あぁまたこの子か
なぜか無邪気に笑うタレントに癒される
誰か身近にいてほしかった
笑顔の温かい人

2008年7月2日水曜日

錯綜

崩れた関係は二度ともどらない
形を変えて色を変えてまた自分の元に返ってくる
いまここでもう一度自分に問う




映画館に久しぶりに足を運ぶ
子供の頃親に手を引っ張ってもらい誰もが安心してみられるアニメを見てた事を思い出した
今は一人で鑑賞に堪えうる孤独ないわゆる病的な愛着を持ったアニメに執着していた
赤の骨格のタワーは巨大ロボットの腕で思い切りひしゃげられ過去をいきなり描写したり
人が枯れ枝をポッキリ折るかのように死んでいったり
自分のフィルターでそれが何倍にも増幅されその頃から自分の世界に拘泥する快感を覚えた
誰か後ろで見てる気が・・・
気のせいだろう
終わると後は複雑な路地裏を通ってゲームセンター
今では信じられないが自分の学生時代の大半を捧げてしまった
熱狂は凄まじいものがあったから
あの空気を確認するだけに自分はただ宛も無く行くのである
街 待ち 真知

あの時出会わなければなんでどうして俺は普通の人生を・・・
いや自ら望んだ事だ
気付けば回転焼きやたこ焼き屋が並ぶ商店街の入り口を前に
少し気後れをし
自分だけに与えられる時間を確認しに家路についた

2008年6月30日月曜日

余韻

他人
今度こそは本物だろうか?
不完全を払拭した
自分に対する気持ち

次に声がかかるのはいつだろうか
なぜ巡り会えたのか

どの人もみんな消えていった
その中途半端な下心で

温かな人
いずれ出会う事を確信して






朝目が覚めてもあの海が忘れられない
全てが胎動しているど真ん中にいる感じ
塩の香がほのかに残る場所
なんだかたいした悩みもどうでもよくなってくる
生きてる事をまじまじと実感する

昨日の朝誰かと思い表に出ればデレビの受信状態の点検だそうだ
この家にはケーブルがはいっていて好きな番組を見れるそうだ
自分はたいした用もないからこういった暇つぶし、いや勉強にはとことん興味がある
軽い興味心から加入しても良いかなと思った
世界は何処とも無く繋がっているまた裏ではとんでもない事が繰り広げられている

電車はゆっくりと郊外を走る
研究都市ともうすぐ呼ばれるこの地帯は山の掘削がもう始まっていて
後数年経てば外形が様変わりしてるのだろう

40分近くたっただろうか窮屈なトンネルが
所狭しと配置してある
天然の岩肌をそのまま残し
アトラクションのように暗くなってゆく風景を楽しんだ

ここらで一度降りた方が良いな
そう感じた自分は
無人駅にひっそり足を踏み入れた

海岸線沿いだったからもうすぐ海が見える事はわかってる
自分の足で確かめたいんだ
そして目の前に広がった世界
とても写真には納まりきれない雄大な風景
島があり水平線があり波があり空があり
誰もいない砂浜でただこの世界は何処から何処へきたのか
自分の世界を遥かに超えた力を見た気がした
またくるよ

途中砂浜を降りるところでどこかで嗅いだにおいがした
線香だ
気付けば先祖の墓参りの後だった
いまの命
誰かに繋がれた命
望まれてこの世に生まれた 
だが
自分が好きになれない
事実だった

結局家に帰って写真が一枚ものこってはいない
あれはなんだったんだろう

その時家のインターフォンがなった
集金だろうな
だが新しい別の世界への入り口がまだ待っていた

能面


おもちゃ箱をひっくり返したように過去未来が色々襲いかかる
重い夢を見た後は生きた心地が希薄だ
夢は誰のせいでもないただ自分の引きずった経験記憶霊感
心なしか夢の味が濃くなってきている


デジタルカメラの使い方は知ってるよね
あぁシャッターはここフラッシュの切り替えはここズームは5倍まで
何を映すのか知らないけれど良い画を期待してるよ

知り合いから借りたカメラ
自分の目で映った画を他人にも確認させたい
狭い世界はもうまっぴらだ

地下鉄の改札口を抜け在来線に乗り換える
単線だけどここはもう都会になりつつある
大企業や大学の研究所が移りつつあった
都の位置が変わると抵抗する事をなぜか当たり前のように主張する
生活が脅かされる
それ以前に文化の基軸が少々ずれる
ここは俺の街だ
生まれても死ぬ時もずっと一緒だ
だから美しい場所をまんべんなく探そうといや自覚しようと思った
自分がどんなに最低で醜い生き方でも

2008年6月26日木曜日

食事

いらっしゃいませ
買い物かごをふと持ったとき我に気付いた
あ、店員さんだ
目の前できょとんとしてるその目は相手にも映ったらしく
笑顔で返された
生活がますます淡白になっている

滋養をつけるために今日はうなぎの蒲焼きを買った
贅沢をしたくてもこのくらいが限度
食欲とは不思議なもので何もしなくともお腹は減ってく
老人と話した事がある将来こういうお店で買う事はだんだん減ってく
ネットで配達をお願いすればすぐに届くスーパーは所謂倉庫になる
そんな事を望めば今の生活はどんどん希薄になる
しかしただ売るだけなら今のネット間に置ける取引の方が有意義ではある

欠かさず食べてるものいつも買ってるもの果物
青林檎
いつも皮のまま齧ってる
幸せなんだ
あの甘酸っぱさ噛んだ歯ごたえ
ミネラルウォーターを一緒にがぶ飲みする
口に含むと緩い感覚がするミネラルが豊富な水

明日こそは旅に出る
美しいものを沢山映す
眼の裏で映写機を映すように想起した

2008年6月17日火曜日

本音

携帯の着信履歴にぽつりと入っていた一件の履歴
よく見れば香織だった

あ、ここに来た事はまだ身内以外知らなかったんだ
早速かけ直してみる
出るともう最後に伝えておきたい事があるといった
俺は最後になる理由がわからなかった

じゃ二〜三日後に

今日は近くの公園でアコギでも鳴らすか
一日一日がなぜか自由だから勝手気侭に過ごす
ただ他人に伝える事も必要だという事を自覚して

池のほとりに腰を下ろすとランニングしてる人達がちらほら見えるくらいで誰もいない
思い切り声を張り上げる事ができそうだと思い
俺は思い切り腕を振り下ろした    
 

三十分くらい経っただろうか思いついた歌詞を記録していえに帰る
素直に自分を出せたら俺はこんな本音を隠し持ってたんだ
誰にも見せた事の無い痛く悲しい詩 
誰かに言いたかったけれど宇宙に向かってしまった
運命はただ静かに胎動していた
自分のした事は静かに次の悲しみを生む事になった

部屋

あなたの存在なしでは何もできなかったよ あなたが今の自分の全て
この胎内で自分は人間のもとを知る




朝目が覚めると普段なら何かに気付くはずだった
スケジュール、場所、時計 全てが空っぽだった
顔を洗って歯を磨いてる最中に俺はこの部屋で一人暮らしてるのを知った
当たり前の事だけどなぜか気付かなかった 懐かしい香りのするこの部屋
どこか自分の在処を知った

日中は暇なので近くの碁会所に通う ヤニ臭く年寄りばかりだが含蓄のある人が居て
普段味わう事のできない昔の記憶や教訓を教わる
シチョウを知らない自分は意地になりごっそり石を抜かれていたとき 
所謂冷静に未来を見る事も人生には不可欠なのを学んだ気がする
生きてる石、死んでいる石、おとりになる石
皆最初は平等だ
戦いはトータルで占める
捨て石も時には有効なのだから
全体を広く見据える事
老人たちは皆余生を後世に伝える事で生き甲斐が出るのかもしれない

日もくれて、近くの弁当屋でかき揚げの弁当を買った
チェーン店の弁当もいいけれどそのオリジナルの店はなぜか家庭の手料理に感覚が似てる
何だかいつの間にか人間関係は狭まり億劫になってきたけれど
数えきれないほどの自分の世界で手一杯になった
ここには宝の山がある
他人から見ればすごく怠惰で横着な人間だった
しかしこの部屋の独特の空気は自分の呼吸すらも察知し適切なものに置き換えてくれる
一人の時間が増えてくのがそこまで怖くなった時
何かの前兆も兆しも無かったとき
ただ静かに俺はあるべき日を待つ事になった

2008年6月11日水曜日

念写 

夢を見ていた
また誰かを裏切る夢
いい部分も悪い部分も含め少し嫌気がさす
何かを書けば次の反動も否めないのだ

机の上には放置されたビールの缶
昨日の夜

すいません洗濯物を干してる最中に時計を落としたものでそちらにございませんか?
あっこれのことですか
いや〜ありがとうこれずっと使ってたんで本当助かりました
洗濯は陰干しですか 
そうですどうせ昼に干しても日光の当たらないこのビルでは・・・
あっこれよかったらお礼にどうぞ
そう言うと一缶のビールを置いていった
思うにアルコールはものを考える自分にはあまり合わなかった
静かに目を瞑りプラネタリウムを感じるように自分の世界を夢想する
あぁこの世界の静寂にこそ真実はある
言葉遊びから一転
別の世界へ足をつっこむのだった

少し経ってテレビが無い事にすごく寂しさを覚えた
テレビはいつだって受け手に一方的だから大人のやかましさを倍加した存在でもあった
こういう時こそ電車に揺られて写真を見に行こう

その写真というのは自分の中で景色という言葉だ
景色は時に自分の精神を象徴するかのように変化する
その境地に追いやられたとき現れる景色主に部屋で寝そべってる時に頭に挿入される
そしてその現場で感じる景色
そこで美しいと感じるのが自分の最もいいスタイルだ
以前寝そべってもゴミ集積場のイメージばかりが降ってきたここには前進は無い
今度はカメラでもぶら下げてみるか
ファインダーの奥に自分の意識を投影してみる
今は一日中どこかできれいなものを見る事が日課になった

2008年6月10日火曜日

水槽の中の自分

自分が僕の母親と疑わないもう一人の人へ



フローリングだが少し手狭な1k
此処で新たな生活は始まる
母親たちが敷金も家賃もとりあえず出してはくれた
何だかまだ家庭暮らしの延長のような形態ではあった

インターホンが鳴る
でるとここの大家さんだ

あらもう荷物は済ませたんですか?
えぇ少なかったんで・・・
わからない事あったらそこの階の102号室に住んでるので
いつでもどうぞ
でも物騒な事件が多いですよこの辺りは

以前発狂した通り魔がこの辺りをうろうろしてるという噂を聞いた事がある
全国規模で考えるなら追いつめられた人間というのは伍萬といる
他人に危害を加えるか自分をとことん追いつめるのか
確かに自分は後者のような気がした

一階の東向きのベランダには洗濯物に日照する時間も短い
夜陰干しでもいいくらいだ
元々夜型なのだから一人で親に迷惑をかけずに住む

荷物はできるだけ少なく持ってきた
机とベッド
後少々の本
精神の栄養が足りない時に2〜3冊束ねる
これといって必要なとき必要な量だけ手に入る事は無いけれど
肌身離さず持って歩くのは無精な自分にとって程よい解決法だ


軽いストレッチ
そしてボールを持ってイメージトレーニング
軽い散歩

午後は比較的簡単な参考書を開いて頭をほぐす
資格のためでもあるがこれは保険でもある

深夜に大体自分の創作意欲は生まれる
しかしそれは大多数の人々には受け入れがたいものだった
たまたま評価を下してくれた人もいたけれど
所詮自傷癖の戯言だ
それでも一日一つは何か書き残したくてここに居た
ここはヒートアイランド現象を起こしている
自分だけが浮かれてる
だから道をいっぱい持つ事にした
どんな道でもくじけないように

深夜にもなり
ベランダを見ると何かが落ちていた
見ると高級な時計のようだ
上の階の人間だろうか?
ポーン
インターホンが鳴った

2008年6月5日木曜日

目覚めよ私

真夏のむしむしした熱気が体をねちっこく捉え始めた
額を拭って少しばかりしのいだ
熱さは容赦しない
まともな思考能力は湧かなかった
家の近くの川には散歩で犬を連れている人々やベンチに横たわる人
水浴びをしている小学生たち半裸で笛を強くならしてるものもいる
うつろに目に映ってきた

自分の家に帰るなり
友達から破格で分けてもらった合法ドラッグをほおばる
鼻から何かが吹き出てきそうな恍惚感が襲った
母親も父親も既に自分は独立した個体だと勘違いして
何をやるにしろ無関心だ
だから好き放題にした

財布をのぞくとドラッグを買う金があまりない
アルバイトにしろ仕事にしろこんな挙動不審でみすぼらしい自分を雇う余裕などないはずだ
財布からごっそり抜け落ちた札束
以前コンクール 出版社のコンクールに応募して賞金をかなりもらった
論文にしろ感想文にしろつぼを押さえれば人の心をわしづかみできるものだと
妙に納得していた
今は微塵も無い
ドラッグはすぐにでも辞められる
しかしこの崩れかけた人間関係を修復する体力は無かった
部屋で天井を眺めてると俺はなんで生きてるんだろ?
ホルマリン漬けの死体のようだ
考えるあれこれどうにもならない現実を堂々巡りで考える
そのうち袋小路でもがく自分が少し快感に映った
誰か上で俺の全てを否定する夢を何度見てきたか
才能があれば
確かに金に換算できる才能
いや人を呼び寄せる才能があれば
凡人とはこうも苦しく虚しく時は過ぎてくのだろう

次の日女友達の香織が遊びにきた
仕事が早く終わったから会いにきたという事で
なんかとても違和感がない
会った当時私風俗でバイトしてるんだという言葉にたじろいだが
なんのことはなかった
彼女はその事実を吹き飛ばす以上に澄んだ瞳を持っていた
審美眼
人を見ぬく目
しかし麻薬を常習していたせいか
何度も施設を行ったり来たりしている
今ではヘビースモーカーで時折笑う歯はとても黄ばんでいる

呂律が回らなかった時は何を言ってるのかわからなかったが
自分より遥かにシンプルに考え行動してる姿が強く離れられなかった
最近至らぬ考えが浮かぶのを阻止してくれる貴重な人だ

次の日珍しく母親が神妙な顔をしてこの部屋に入ってきた
今日は折り入ってお願いがあるの
そろそろ一人で暮らしてくれない?
ほらあなたもいいとしだし
世間体やこれからの未来も考えるとどうしても離れるべきなのよ

俺は一つ返事で了承した

2008年4月22日火曜日

arigatou

決行時はきたのなり
小生一週間前から掘り当ててる裏口のドアからこっそりと抜け出したのなり
家族はもちろん寝静まったまま
真っ暗な空間でも久方ぶりに味わうその空気の清々しさが今も忘れられないのである
早速昔のつてを当たった
同じオス猫のマイケル彼は駄目な見本のようなものでどんな汚い場所でも安全なら寝てしまう
小生の反面教師だった男なり
マイケル、あれマイケル
ここにはいないにゃ〜
誰か声かと思えばちびた子猫
おぉマイケルの子供かな
全然違うニャーまだ生まれて二ヶ月も立たない子猫ですがな
その割にはおお、おお随分としっかりとしてるではないですか
あんた人を捜してるようだけどここではジェニーといってアイドルのような存在の猫に気に入られる事が先決ニャー

ジェニー ふー面倒な事なりね
その夜は家の外にあるゴミをあさって一晩をこしたなり

子猫に紹介された場所を当たって訪ねるとその猫はいたのなり
いろんな場所を丹念に舐めて毛繕いをしている
年は30くらい
脇には差し出された沢山の餌
ジェニーはどう誰にも飼われなくても豪華な暮らしは可能なのよ
一目見たら忘れられないきらびやかな視線を浴びせてくる

何かいいたい事は?
ジェニーはそのキラリと光る眼光で自分に問いかける
人を捜してるなり
小生の母親 まだ生きていると思うなり
でその見返りは
え!?と
そんなものが必要だったとは小生たじろいだ
いいわ今回だけただで見てあげる
そのかわり今度そんな汚くてみすぼらしい格好で私の前に現れたら相手しないから

ジェニーは自分の顔をまじまじと見つめしばらく考え
ここから10ブロック行った場所にあなたの面影があるメス猫がいたわ
でももう・・・・
そうなりか死んだなりな
そうじゃなくって
忘れてるかもしれないってこと
雌猫ならわかると思う

小生ありがたく情報を受け取り10ブロック先の建物へ向かったのなり
もう朝から昼間に映って忙しげに人や車は流れてる中
小生ついに見つけたのである
体は少し自分よりおおぶり
目元や模様もそっくりの雌猫を
小生はためらいも無く

母上 母上
小生は声にならない叫びで
母上に必死でアピールをした

ふと気付いたのかその暖かい目で小生をちらりと見る
しかしその瞬間視線をそらしツンとしたのでござる

後ろには沢山の子猫
大事そうにぺろぺろと舐める光景を見て 
小生悟ったのでござるもはや自分だけの母親ではないのだと
自分の子供
誰か別の親との子供
なぜ分け隔てなく愛せないのか
小生にはとんとわからぬ世界ではあった

夜遅くこっそりと家の中に忍び込む
ただ事では済まされないなと覚悟をしていたでござるが
物音がしたと同時に顔を上げると
この家の主人がこちらを見ていたのなり
なんと一家総出で自分を迎えてくれたなり
みんな涙で顔を腫らし自分をいきなり抱きしめてくれたのなり
お前を失う事だけは絶対にいやだったんだ
小生恥ずかしながら自分の思うがままに生きてきたなりが
必要とされていた事にこの年になって初めて実感を覚えたなり

相変わらず家の中でしか生きられないでござるが前よりもずっと大切にされているなり
小生友達が出来たのなりといっても異性でござるが
小生よりもずっと毛並みもよく高貴でござるが
分け隔てのない性格でこれとても愛おしいなり

2008年3月18日火曜日

ありがとう

小生
生まれて此のかた外の世界を知らず
生まれた時は8人兄弟だったけれど残ったのは自分一人
母親のぬくもりも知らなければ兄弟の連帯感も知らず
この家に生まれ死んでいく
誰もが当たり前だった

二階からどたどたと足音が下りてくる
たぶんこれは
ちくしょうまた勉強の成績があがらねぇ
このうんちきしょーお前のせいだ
お腹を思い切り蹴り上げられる
派手に転べば彼らはおもしろがるだから身をヒョイッとひねって何事も無いかのように別の部屋に行った
台所ではこの家の母親が家計簿を眺めている
あ〜何でこううまく家計が回らないのかしら
ちくしょうめあんたのせいよ
今日は晩ご飯抜きだから
せいぜい二日に一回食べられるのならそれで幸せなり


あ〜またあいつだえいあっちに行け
小学生の弟
エアガンでいろんな部分に乱射される

小生
毛並みはもうぼろぼろであちこちが栄養失調と虐待で禿げてる

でもこれが愛情の証だと思ってる
外に出たいとドアを削ってもしっぽを握られ引きずられるだけなり

夜主人の帰る頃合い
一番身の毛がよだつ時間が待ってる
小生酒は大の苦手なのに
無理矢理口をこじ開けられ酔わせる
ふらふらになったのを家族は笑う

でもこんな小生
いつも出る言葉はありがとう
虐待を受けている最中にもありがとう
それが愛情の表現だと思ってるから

あらあらこんな顔をして母親の猫が見たらびっくりするわよ
思わずこの家の母親殿がぽつりと漏らした

小生の母親は生きてる
そう思うだけで会いたいという気持ちに駆られた

2008年3月16日日曜日

Smile no reason why

ちょっと遅くなったかな
買い物を済ませて袋にはどっさりと食材が入っていた
顔を見上げると
家には電気がついていた
合鍵で幸治が既に中にいた

ごめん今日はちょっと仕事が入ってて
幸治は思い出の写真を懐かしそうに見ていた

ほらお前まだこんなにあどけないよ

うん確かに昔は自分でもかわいかった
今から料理作るね

いいよ今日は特別に外食をしよう
もちろん予約済み

何だろうこんなに懐かしいのは
まるでであった頃のように幸治の目は輝いてる

今日は記念日
二人が学校で出会った最初の日

幸治は高級なお店で料理を食べようと言った
でもいい
覚えてくれたのならそれだけでも幸せ

あのさ
いや今日は楽しく過ごそう

店に着くと幸治はあまり楽しそうには食事してくれなかった
少しうつむき気味で
しかも何かを考えてるようで

彼が
幸治が笑ってくれるなら
私はいくらでも努力するよ

少し外の風に浸ろうという事で海にいった
真新しい風がここでどんどん生まれてくんだね

幸治は私の顔を見ずに静かに言った
おれHIVに感染したんだ

え?

しかも浮気をして
自業自得だよ

私は言葉を失った

ごめんな
自分を何度も責めたけどどうしようもない
君の笑顔を見るたびに心が痛むんだ
もうこれ以上は

私は頭が真っ白になった

涙を落とす幸治の顔を見てふと
近くにある手を握った

私はまだ幸治の事好きだよ
これから始まる戦いにも私は一緒にいてあげる

一緒に笑ってくれるのならいつだって幸せは続く
おわり

2008年3月15日土曜日

Smile your left eyes

こんな俺でも人生は順風満帆だった
何も罪など無かった
だけどあの事件
あのミスで俺の人生は変わった
仕事の帰る途中バイクで人をはねてしまった
たった一度のミス
以来被害者の口座になけなしではたいた金をせっせと納めていた
唯一の贖罪だった

ある日被害者が会いたいという電話がかかってきた
今まで自分に与えられた罰はまだまだあったけれど
これでいいのだろうか
疑心暗鬼のまま会えば
相手を傷つけてしまう

俺はその時から人生が変わった
車椅子から離れなければ何ら変わりない女性
そこには俺の罪は存在しなかった
屈託の無い笑み

だけど 
まだ恨んでると思ってるだろうか 
いや 
許せないとでも思ってるだろうか

いらっしゃい今日一日は我が家でゆっくり過ごしてくださいね
入り口で快く迎えてくれた
事故の事はいっさい話さずに
ただ人とのふれあいが楽しそうだった

帰りに
また会ってくださいますか?
実直で素直な欲求
その言葉にきょとんとした
何を求めているのか自分にはわからなかった

会うたびにその人はきれいになっていった
そしてそれに反比例するかのように後遺症は悪化していた

残された時間がわずかという事は説明を受けずとも理解できた
あの人が笑ってくれるなら
あの笑顔を失う事になるくらいなら

真っ当に稼ぐ事を知らない俺は悪事にどんどん手を染めた
罪の意識を持ちつつも
俺はこんなあたたかな人の人生を奪ってしまった
多分目を失っても彼女は今手を染めている俺の悪事を感じ取るだろう
どうすれば?
あの事故を何かのきっかけだと思うようになり
人生を転換させようと考えた

2008年3月13日木曜日

あなたが笑ってくれるなら

途中ですが別の物語を挿入します
迷惑おかけしますが了承ください


携帯の着信音いつもと違う音
きっとこれは幸治だ
いつもはぐらかされていたけど今日は何の日か覚えててくれたのかな

電話を耳に当てると
あれっまだお前外にいるの?今日は家にいてくれよ

何だろう一体
何だって不器用だから
記念日も覚えてないし
好きだってこともはっきりしてくれない

何となくこの人しかいないのかなって始まった関係も
ちょっとぶれがある

私はちょっぴり思ったまだつきあう前の幸治の印象を
結構妄想だったよ
どんな趣味でどんな言葉が好きでどんな性格で
実際になって
声に出してしまう事が多かった
いい意味でも悪い意味でも
結構現実に裏切られてきたのかも
妄想してた頃の方が幸せだったかな

急いで帰らなくちゃ


場面2

ねぇバイトいつ終わるの?

ひみつ

でも今日のロードショーに間に合うかもしれないね

あなたって本当ばか正直ね
もう終わりよ

よかったじゃ今日一緒に映画に行こうよ

今日はこれから約束があるの

誰もしかして男?

ふふ

少年は肩を叩かれた
ナンパかね
だが次の仕事はまだまだだ
さぁ約束の時間だ
後は頼むぞ

きれいな顔してるね
美しい足ですね
いい香りだ

褒めすぎるのももう馴れた
さすがにこれだけでつられる女はいないけれど
優しさに飢えてる女は沢山いる
脂ののった独身女性
何度も騙し続けた
いや夢を見せてきた 高い代償で
でもようやく俺も人を好きになれた
人を騙しても微塵も後悔しないのに

笑顔が好きだった
はにかみでも苦笑でもない
自分をまるで包み込む
存在を心から喜んでくれる
幸せにしてくれる
彼女は今自宅にいるはずだ
電話番号も知ってるし
特別な日だから祝って一緒に祝ってもらおう
優しくなれるそんな時間が無ければ俺は腐ってくところだった

つづく

2008年3月12日水曜日

効果

通勤の途中昔は雑音のようだった雑踏は妙に自分とシンクロしている
職場にお土産をそう思い売り場で手頃な和菓子を買う

なんだか無駄な鋭気は消え人を優しくおしなべる気持ちが沸々とわいてる

電車はすし詰めだけど心のゆとりがあれば
世界は心の持ちようで変わる
たとえそれが小さかろうが大きかろうが

オフィス、会社、俺の居場所
おはよう
自分から挨拶が自然と出てくる
自然と自分に固執する人間はもういない
のびのびと楽しく
そんな言葉に近い自分の居場所

主任これから会議です
ついにやってきた自分を試す番が

俺は賭けに出た
プロジェクトを説明するのではなく自分の描いてきた夢を人生を熱く語る
駄目なら駄目でいいんだ

部長、社長、佐藤
みんな真剣な眼で自分を見てる
会議をする前に少し説明したい事があります
それは・・・・

会議は静かなどよめきで終わった
あいつにそんな考えがあったなんて
なぜ今そんな話題を
いろんな思いがみなに交錯していた

佐藤はいきなり俺に
表情はいつもと同じなのに中身が死ぬほど変わってましたよ
こんな初々しい気持ちは久しぶりだ
全力でこのプロジェクトを成功させますよ

一石を投じた俺は残業をする事を選んだ
何の事は無かった今まで自分が隠し持っていた実力を出せただけの事
しかし俺は幸せだ
忘れていた情熱、若かりし頃不完全燃焼で終わった情熱
取り戻せそうなんだ
その日は丁度12時を回った頃家路についた

改造

雨がしとしと降り始めた
これは心が泣いてる事に呼応してるのだ
中年男
今朝会った中年男
何か私に助けを求めてませんでしょうか?
無理を言え
俺は今日そんなつもりは
お力になれる自負はあります
私達はあなたのような人を待ってました

その真面目な顔に寸分の下心も見いだせなかった
おもわず
どんな場所にでもつれてってくれ
と頼ってしまった

あの雑居ビルの一階
薄暗いロビーでぼーっと待ちぼうけしてると

あの中年の他に一人女医のような格好の人間もきた
俺の顔を見るなり
端正な顔立ちだ確かにこれは売れる
いきなり俺の顔写真を撮影した
無礼なのは承知です
これから説明を始めるって時に
ただ知ってほしいのですリスクの無い場所に幸せは転がってはいない事を
あなたは表情をどう思っています
心を映し出す鏡のようなものですよね
これらを常に一定にしかも中身まで改造できたら・・・

で俺に対する要求は
吹っかけるつもりなら

あぁ待ってください
料金は最初にいただきません
効果を実感してからです
ただこの技術で幸せにお金持ちになってもらいますよ

俺はストレッチャーに乗せられ手術室のような場所にいた
麻酔で少々眠ってもらいますのでそう言うと女医は自分の静脈にゆっくりと針を挿入した
どれくらい眠っただろうか自分の体が少し変だ
なんとなく気分が前向きだ
そして俺は後になって身の毛もよだつ事をされた事に気付くのだった

それでは気をつけてお帰りください
効果は後のお楽しみってことか

家に帰るまで自分が紙袋をぶら下げていた事に気付かなかった
中をのぞくとシリコン性のパックが入っていた
説明書
読むのは後にして
今日は疲れた体をいやし明日沢山の人の顔を見よう
自然と会社が好きになりつつあった
なぜだろう心に少しゆとりが生まれてきた

2008年3月11日火曜日

回廊

今わかった
会社にもう居場所など無い
しかし自分にはまだやり残した事がある
もっと笑顔の溢れる職場、そこにいるだけで楽しい職場
そんなものを目指そうと思っていた

五時過ぎ早めに会社をあとにし飲み会へと顔を出す
ネクタイを緩めると早速つまみが出てくる
ビールと枝豆
無性にこの日は相性が合う
胃に染み渡るように味わった

ほろ酔い気分で辺りを見渡すと佐藤が記念撮影をしている
持ってきたデジカメにどんな写真があるのか
ほんの少し興味があった

主任
いきなり声をかけられる
僕はいつまでも主任の味方なんですから
佐藤は事情を何となく知ってるようだった
酒はおいしい
普段自分の中にある心をなぜかさらけ出し洗ってくれる
そのまま気分よく酔いつぶれるべきだったかもしれない
しかし

主任

どこかで聞いた事のある女性の声だ
響子
多分響子だったかもしれない

その誰にでも見せてる屈託ない笑み
お願いだ俺独りに独り占めさせてくれ
せめてこの時間だけは

みんながあなたを必要としてる限り
どんな事があっても負けないでください

俺はいきなり響子の手を握った
もし後数日のうちに結果を出せたら願いを聞いてくれるか?

響子はしばらく考えたが
うつむくようにうなずいた
笑顔のおくは涙のようなものも見え隠れした
錯覚だろうか?

ビールの次は日本酒だった
揚げ豆腐をつまみにしキリリとした味を楽しみ
閉めは自分の世界へとどっぷり浸る
勢いのあまり響子と約束を交わしてしまったことを少し後悔し
早めに切り上げた

時計は午後10時
まだまだ夜は続く
はっきり言って自分に勝算はなかった
既に個人がなんとかできるようなプロジェクトは皆無だった
おわりたくない

ふと誰かが自分の後をついてきてる
誰だ?
今晩わ今日は暖かいですね
今日の朝会ったあの中年
忘れるところだった
活きのいいネタは転がってますか?
俺はテンションだけは一人前に上がっていた
もちろん、男は目をそらさず全てを飲む込むようにたたずんでいた

事情

会社の机に座ると今日の仕事がざっと乗っていた
これくらいなら前の自分なら午前中にでもめどがついてしまうのかもしれない
昔は誰も内外の目にさらされずいわゆる努力に疎い人間でも生き残れたが
今は外資からの社外取り締まりが厳しくなった
問題はそんな事じゃなかったあそこまで我武者らに会社のためにやって来れたのは一体

誰のおかげだったんだろう?
結婚をし、子供が生まれ家庭を持って
離婚をして心はぼろぼろになって
ゴール前の双六を何度も目が合わず振って振って振って
無意識にくるゴールを待ちわびていたのだろう

真横には今日の景色
人はまばらだが空は非現実すぎるほど自分を覆い尽くす

主任

はっと我にかえる
今日は営業部だけで飲み会があるんですけどもちろん行きますよねぇ

最近になって自分も後がまを捜さなければならないと思い始めた
いわゆる若手育成だ

あぁ頼むよ、活きのいいやつ沢山つれてきてくれ

昼休み
食堂で八分目くらい食べると
屋上で一服をした
食事よりタバコがおいしかった

同期の奴とよく辛いとき励ましあったな
今ではいろんな会社に転職して才能をふるってそうだ
今の会社が好きだから残ったんじゃなくて
自分にはここしか無いと半ば切羽詰まった感情が自分を揺り動かした
現状に満足

あれ
そんな場所にいたんですね
ふりむくと
後輩の若手、佐藤がいた
主任も結構いろんな場所を知ってるんだ
なぜここまで馴れ馴れしいのか
それは結果を出しているから
人付き合いも良く実力もある
独創性という面では劣ってると勝手に解釈しているが

食後の一服ってなんでこんなにたまらないんすかね
佐藤はおいしそうに煙を吸い吐き出す
あぁ仕事が終わった時もまた格別だな
今日の飲み会期待してますから
主任には負けたくないですから
俺の人付き合いの下手さを皮肉ったのか

何となく時代は分かれてく

デスクに戻ると課長からなぜか呼び出しを食らった
しかも個別にだ
神妙でしかもなぜか目を会わせてくれなかった
君には不服かもしれんが今日はこの部屋に行って仕事をしてくれ
そう告げられると
最上階の一番奥の部屋
真っ白で何も無い部屋
いわゆる早期退職社へ導く歪な部屋だ
パソナルーム
噂には聞いていたがうちにもあったとは
新聞やら携帯やら何をしても自由な部屋で俺は
今に見てろと
自分の闘争心が久方ぶりに目覚めた気がする

2008年3月5日水曜日

mask

何処にでもあるようなサイトだろうそう思っていた俺は赴くまま誘われた
そこにはこう書いてあったあなたはどのくらいの顔をお持ちですか
それにはどれくらいの値打ちがあるでしょうか
私達が新たに提供する事も出来ます
どうぞご自分の目と顔でご確認ください

どうでもいい
最初はそう感じた俺もその大元の住所が会社に近い事もあって
少し立ち寄ってもいい軽い気持ちが沸き上がった

朝4時からその店は開いてるそうだ
会社が始まる前にでも覗いてみるか

薄汚い雑居ビルの一角ここに古びた看板がある
豊満な笑みを
仮面堂

冗談にしても笑えないな
一階に古びた受付のようなものがある
そこで待っていると
顔つやのいい笑顔が少し誇張気味な中年男
ようこそいらっしゃいました
いや〜我が社の製品をこの目で確かめたいのでしょう
どうぞどうぞ説明だけでも聞いてみてくださいその価値はありますよ

口車に乗せられてソファーに座って待っていると
これですこれです
書類のようなものを提示された
そこには何かが書いてあったよく見ると誰かが何かを試す前の自分の状態を記載していた
あまり見たくはないがよく目を通す

私は損な生き方をしていました表情が固く感情も乏しく笑いのつぼも他の人と違う
でも変われましたこの道具で
最初は?と思っていたけど周りの顔が見違えるほどに違う
中身は今まで通り何も出来ない人だけど周りの人が巡るだけでこんなにも変われる

他の人間にも目を通すと
私は過小評価されていましたいわゆる見くびられていた
第一印象でも弱々しく信頼されなかった
でも変われました仕事も家庭でもたよりにできる最後に託せるのは自分しかいないと
元々実力はそこそこだったからこれほどうれしい事はありません

どうですまだ読みますか?
男は促すように催促する
そうだな・・・
でも
今日は仕事がこれからだしまた今度寄る事にするよ

いつでもお待ちしております

ばかばかしい
俺は思ったよくある自己啓発セミナーか宗教の勧誘だ

夜は12時まであけておりますので
男の声を思い出した
しかし内容を聞かず見限るのは俺の悪い癖だと思う
会社は実質フレックスだ
もはや残業などする体力など無いしまた若い連中の仕事だ
まだ肌寒い大空の下、俺はオフィスへ向かった

仮面

なんて事は無いと思っていたいつもの日常なら
俺の人生は既に終わった
最後に言わせてくれ何が間違ってたのか・・・


全く呑気なものだ自分の意識レベルではだ
どうせたいしたものなんてある程度のレベルに達しなければ見えない
詰まんない、退屈だ、それと少々焦りがある
俺はこのまま実力の半分いやほとんどを抽出できずに終わるのか
また自分より弱い立場の人間に当たり散らす事でそれを解消している
それに対して何らかの呵責も抱かない

今日も 今日も 今日も
昨日も明日も

おはようございます
今日も元気に声をかけられる
会社の同僚いや後輩
その子は明るく利発でとても魅力的に映る
この会社の中ではムードメーカーだ
若さが必要なこの会社は実質30歳で定年のようなものだ
それ以降はほとんど脚光を浴びない
大きな仕事を任される事は多くなったけど実質中身には介入しない
自由な社風のようだが責任だけ大きくなってそれらに押しつぶされそうだ

その子は輝いていたみんなから慕われ信頼されていた
都合のいい俺にとっては高嶺の花だった

プロジェクトの打ち上げの日
いつも隅っこで一人深酒をする俺
何かを求めてばかりの人間が自然と集まる
結局形あるもの以外この世に価値のあるものは無い
観念や理想、夢、愛情
全部物の前では儚いと思った

目の前でお酌をしてくれる女性
所謂朝の挨拶が清々しく笑顔が絶えないこの女性
響子
名前はしっかり覚えてる
響子は自分のグラスにビールを注ぎながら
いつも考えてらっしゃるんですね

俺はいつもこんなポジションだよ

みんなの大黒柱ですもの
でもたまにはみんなと一緒に飲みませんか?
ほらあそこの企画部長の飯田さん
いつも嫉妬してるんですよ
あいつはいつも2歩先を進んでるって

そのとき俺は井の中の蛙の争いなんて今は眼中になく
如何に自分を取り戻すかに東奔西走していた

年を取ると経験は豊富になる
ただ抽象的だがキレのようなものが鈍ってきた
自分の企画した物はどこか牧歌的で相手を説得できるものが弱い
一度ふざけて若手に仕様書を丸投げしたら
期待以上の結果を投げ返してきた
聞けば自分の過去の企画書を参考にしたとの事
それ以来すべてとは言わないが努力以上に才能も十分でないとまともなものは出来ない
特に創作的な企画では当てはまる
しかも才能というものは鍛えようが無いそれに自分以上の人などそこらにゴロゴロしている
言葉を変えるなら人には向き不向きが伍萬としている
今度の仕事が自分の期待にあわないなら本気で会社を辞めようと思った

定刻通り会社を出ると明日の事ばかり考えていた
家に着くとPCのスイッチを入れる今日のニュースをぶらりと見ている
宣伝だと思うがそこになにかあった、
自分を試したい人へ
何か好戦的なフレーズが目についたのだが暇だからという思いでクリックしてみた

2008年2月18日月曜日

喜望峰

町に出ると沢田は辺りを見渡した
辺りにはまばらに人が点在していた
なぜかこの日はストリートミュージシャンの姿はあまり見ない
シートを張って座り込む
沢田はこの日のためにとっておいた歌を全部披露しようと思った
決して見せかけでもごまかしでもない歌
胸の思いを伝え
自分でも少し恥ずかしいものでもある
あぁ俺はこの日のために音楽をやってきたんだな
短い感慨に浸りながらも沢田は心酔した

演奏が始まって間もない頃一つの異変に気付いた
誰も周りには立ち寄ってくれない
むしろ避けている
沢田はちらりとも見てくれない人の波に疎外感を覚えた
そして誰一人としてみてくれないまま演奏は終わった
沢田は複雑だった
俺の音楽は少しおかしい、少し間違ってる

そう思ったとき静かに拍手の音が聞こえてきた
静かに近づいてきたのは昨日の女性だった
いきなり
あんたもう絶頂やわ
私の中で最高のヒーロやわ

それはどうも
沢田は慰めか弔いにしか聞こえなかった

待ちたまえ
私は某レコード会社の社員なのだが君一度デビューしてみないか?
この子はうちの社員で君をずっと見てたんだ

今日の歌が一番あんたらしかったよ

みんな酷いな見てるなら見てるって
すると大勢の人達にいつの間にか囲まれてるのに気付く
この人達は?
あなたの歌をずっと待ち続けてた人
行こうよ次のステージへ
立ち止まっちゃ駄目

沢田は膝を落とした
ただ自分を必要としている人達に囲まれる事がこんなにも沸き上がるものなのだと
大粒の涙をぽとぽと地面に落とした

おわり

2008年2月16日土曜日

到達点 A

建物の中に入るとと突然光線と渦のような音が襲ってきた
エレキギター、ベース、シンセ、ドラム、DJ
それらが一体となってグルーヴを組みだしている
この生き生きとした目はこれだったのか・・・
クラブでダンスロックをしたいというビジョンは沢田には少しあった
そのリズムは鮮明で何者もとらわれる事を知らず踊らずにはいられない

リスナーが一体となって一つの場を作り出している
ライブハウスでは出来なかった芸当だなそれにもう俺たちは・・・
もう始まってるんだ
新しいジャンルに生きるかそれとも過去の音楽にしがみつく事か

ただ一つ思ったのはダンスは人間を解放する自由な運動
もっと自由に誰でも簡単にできれば・・・
踵を返しまたそのリズムに心を委ねた
いつか自分自身の音楽が間違ってはいなかった事に気付くのではないだろうか
自分がピンときたジャンルはいつだって蚊帳の外だ
それでもきらりと光る何かがある
可能性を信じたもの
自分の手にしてもいいのではないのか
まだ遅くはなかった
リズムマシンを背負った沢田はそれ以来のれる音楽を探究した
今度は受け手を主人公にも出来る
飽くなき探究心と限りない思いは続く

おわり

2008年2月12日火曜日

分岐点

ギターを脇に挟みひたすら走る姿
沢田は届けたい曲がうちにわいてくるのを感じた
こんなにスポンジのように考えが吸収できるのはまたとなかった
否 感情だ
ふと途中で人垣が出来てるのを発見する
クラブかディスコの行列
よくあるパターンだと素通りをしていたしかし
行列に並んでる人達は皆目を蘭々に輝かせていた
果たしてナンパやドラッグを目的にこんな情熱は生まれない
沢田は一礼をして中をのぞいてみる事にした
→A
いやこんな事をしている暇はない今わき上がる自分の感情を伝えねば
町へひた走った
→B

2008年2月10日日曜日

交差点

レコード店や会社からは到底目を付けられるはずも無い沢田は
路上で自分の居場所を確かめる事にした
小脇に自主制作盤を置き
機材もろくに使わず
ギター一本でライブをした
目の前は真っ暗で誰が聞いてるのかも解らない
ただ入れ替わりが目まぐるしくまるで走馬灯の中で歌ってるかのようだ

そして路上ライブも佳境を迎えた頃
一人目の前に立っていた
20代くらいの健康そうな女性

沢田の横にあるものをさして
あれ売ってるん?
うん一枚500円
そのCDを一枚拾い上げると舐めるように裏表を見て
売って、これ売ってや
ええ歌やん

沢田は自分に共感できる人がいるという事が意外な事に思えた

明日は?
え?
明日も歌うん?
仕事が終わったらすぐにくるけん

今まで直接感想や売れてゆくのを見た事が無かった沢田
独り占めにされた自分がなんだか面映い
しばらく考えてなかった事
歌で誰かを幸せにしたい
大切なものをもう一度手にして
次の日
なぜか昨日から喉がいがらっぽかったなぁと思ってたら風邪をひいていた
体調を優先させて
今日は路上でライブをするのはやめよう
約束してたけど明日になったらきっと俺の事なんて忘れてるだろう
勝手な思い込みで封鎖してしまった

沢田の歌詞に恋愛など微塵も入ってはいなかった
死生観、終末思想
特に社会への問題意識も顕著だった

沢田は歌詞もそうだが曲調にも特徴があった
和田を含めても生のドラムが無いユニットだったので
一人で何役もこなすケースが多かった
結果色々な経験が部分部分に生きている
しかしボーカル、ギターを捨ててもボーカルだけは譲れなかった

ふとギターに目をやる。あいつあれ以来話しかけてこないな
やっぱり俺の思い過ごしか・・・・
すると
歌を詩に変えるならどんな状況でも歌い上げれるもんだ
自分のため誰かのため未来のため
この3つを程よく織り交ぜる事が出来たのなら
私はお前の思うままに奏でてみせる

あぁ音楽は辛いさ
作る時も発表する時もその後の反響も
沢田は時計をちらりと見たまだ6時しか回っていない
まだ間に合うかな
ギターを持って一目散に町へ駆けていった

2008年2月7日木曜日

十字路

カセットレコーダーに手を伸ばすと
沢田は静かに目を閉じた
言葉にならなくてもいい
今の自分を素直に出す
ただ一心でコードチェンジもおぼつかない歌を作った

テープが出来上がると早速聞いてみた
何度も推敲を重ねた曲には無い魅力がそこには詰まっていた
これはいける
相方にも聞いてもらわなければ
そう思うとおもむろに電話をかけた

和田は
音楽諦めなかったんだな

そんな気はさらさらないよ
これからもよろしくな
心機一転をして早速

インディース盤を取り扱ってる店に足を運んだ
この曲をここで置いてもらえませんか
ノルマを満たしてくれるならいいよ
でもその前にちょっと聞いてみようかな
その途中で店員は目を丸くした
今までに無い曲だね
所謂問題外だった

沢田は自分の中で何かが変わってしまったのを感じた
聴衆の耳に訴えかけるのではなく自分心をのぞく

音楽に割り切った考えを捨てて
自分に必要な歌を歌う
なんて事の無い理由がその後の沢田を変えてゆく
道は険しかった 誰もいなかった
世界をどう見るか
沢田の音楽は今始まったばかりだ

つづくかも

2008年2月1日金曜日

クロスロード

街はやがて夜が更けてゆく 人並みはゆったりと慌ただしく映る

路上はストリートのミュージシャン、表現者たちの踊り場になる

優しい歌が歌いたい、いつかデビューだ、ただ歌が好きなんだ
入り交じるいろいろな思惑、いや感情
いつまでも音楽は未完成だ
だからこそ人を救い導くのかもしれない
ストリートでも歌いライブハウスでもそこそこの人気を保つ二人組
若さや葛藤苦悩
何より生きる喜びを表現する
上も無ければ下も無いただ伝えれる人達が広がらないだけ

そう思ってるうちに二人は何度も解散しようかと考えたのか

もうこれ以上の可能性なら実家に帰るか職を探そうと思ってるんだよ
ギターボーカルの沢田はベースの和田にそうぽつりとつぶやいた
今まで音楽性の事で一悶着はあったさでもってそんな理由で・・・

報いを求めていたのは何より自分だって事に気がついたんだ
そんな人間が人に何を伝えられる?

いいよそんなに言うなら
しばらくお互い距離を置こう
そう言うと和田はあっさりと帰った

ちくしょう思いのままに自分をぶちまける事が出来たら

それでも我慢だ
ふと誰かがつぶやいた

お前だお前だよ
私をいつもぎこちない手と愛情でかき鳴らしてくれてる
ギターが話しかけてきた!?

沢田は遂に疲れがピークに達したのかな
と感じ聞こえない振りをした

音楽で人を幸せにできると信じてるんだろう?
そのギターは相変わらずの口調でしゃべり続ける

もう疲れたんだよ
こんな世の中に何を見いだしていいのか・・・
いつの間にギターに受け答えていた

お前の歌を待ってる人が一人でもいる限り歌い続けろ
ださい事も平気で受け入れて
その手垢の付いた手でがむしゃらに私を奏でてもいいんだ

家に帰ると朝からご飯をとっていなかったに気付いた
生活はぼろぼろになってきたけど
自分の好きな事が出来る
20代はそれでよかった
夢を諦めるかそれとも信じ抜くのか
あまりにも過酷な選択を強いれられていた

世の中と自分は密接だ 如何にうまく絡めて歌い上げるのか

しかし今日の沢田は違った
自分が輝いていた思い出や記憶、出会った人達
自分の中に内在する宇宙を爆発させようと
6弦のフォークギターをおもむろに手に取った

後半へ

2008年1月30日水曜日

モノクロームカーニバル

その日までの私はまるで檻で飼われた動物のよう






今日で何日目だろ

窓は閉め切ったままカーテンも
光を浴びると気が狂いそう

あたしの人生全て幻
今までもそしてこれからも

食事の時間になれば親が部屋まで持ってきてくれる

他人の顔がみな同じに見える
なんか吐き気がする
ココが一番良い


静けさが狂気を呼ぶ空間



その時私はある異常に気付いた

人の気配も感じない鳥達も車も

街が誰もいない状態になっていた


静寂はどこまでも続いていて
時間も空間もないような


誰?
何か気配を感じる
・・・

待ってよ
いつもなら言葉にならない

夢中で追ってる
いつの間にか見ず知らずの人間を追ってる

咄嗟に足下にある段差に蹴つまずくと
見事に顔面から転んでしまった

痛いよぅ


顔をあげると白い仮面のスーツ姿をした人物がいつの間に目の前に立ってた

おいで
君を連れてってあげる

そのうつろでつめたい表情にキョトンとして


連れてくってどこへ?

いいからおいでよ

街中は賑やかなのに今日は誰もいない


うわぁ玩具や絵本がいっぱい

どれでも好きなものを選んでいいんだよ

ガラス張りのショーウィンドウには
今まで高嶺の花だった人形や洋服

それが欲しいんだね
仮面の男は

持っていたスパナのような鉈でショーウィンドのフロントガラスを思いきり叩き割った

あまりの予想だにしない行動に
思考が停止して横顔を暫く見つめていた

いいんだこんな所に飾ってあるだけより

まるで誰かに縛り付けてあったかのように男は憎々しく見つめていた


ちょっとお腹が空かないかい?
魔法のような料理店に足を踏み入れると

見た事もない料理が次々に目の間に並べられる

人と向きあって食事をするのは久しぶりだった

美味しいと言う言葉よりもこの時は楽しいと言う言葉が相応しかった

さてと
君に見せたいものがあるんだ

デザートのアイスを口の周りにつけ
急な催促にきょとんとした

その裏には何か要求のような
何か大きなものが待ってそうだった

目を瞑って・・・
そう言うと
いつの間にか森の中にいた
そこには変わらない事象を象徴してるかのように
森林 の中に人々のいろいろな事故が詰まっていた
交通事故
飛行機事故
災害事故


傷付いたらまた再生するのを待つよ


それの繰り返し
また
待たなければならないなんて苦しくない



ねぇ名前教えてくれる
あなたの名前


今までぼやけていた輪郭がはっきりと見えるようになった

表情はわからないが
少し微笑んでくれたような気がした


少しづつだけど光を入れる
元の世界に戻るときそう決心した

自宅の玄関の前

・・・
脇に飾ってある鏡を見て
誰なのこれ?
もしかして自分の顔・・・・

目の前にあるのはほんの少しの甘い思い出と残酷な年を取った自分の姿

泣いても戻らない
でも涙が止まらない

ただ現実は戻らないんだ・・・

2008年1月22日火曜日

桃源郷

コウタ起きなさい、もう時間よ
母親の催促で少年は布団から出る
もう秋だというのになぜかポカポカと陽気だ

今日は週に一回の休みの日でドライブなんだから・・・
もう行き先は決めた?

うん、西の方へ向かいたいな

あなた聞いた、今日は目的地無しですって
今で新聞を開いて座り込んでいる父親に聞く

ま、たまにはいいだろう。そうだ今日は安全運転で行くぞ



朝食は取らずに車に乗り込む
母親は化粧や身支度で暫くして乗り込んできた

ごめんなさいちょっと手間どって、さぁ行きましょう

車はゆっくりと走り出す

お父さんの運転だと安心して眠れるよ
はは、信頼してくれてどうも

車は郊外を抜けやがて田園の風景へと足を入れる

あら、コスモスの花があんなに奇麗
母親は目を輝かして窓から顔を伺わせる

もうすっかり秋か


何の変哲も無い交差点
その時、勢い良く脇の道から車が飛び出してきた
対向車に乗っている運転手の女の目がカッと見開く
急ブレーキの音がけたたましく響く

辺りの風景が真っ白になって気を失った
どれくらい経ったのだろう
気が付けば車の中にひとり残されてるようだった
事故の跡は無い
あれは夢だったのだろうか

少年は車から足を降ろす
辺りは霧がかかっており
視界は何も見えない

父さんと母さんはどこへ行ったのだろう

急に風鈴の心地よい音が聞こえてきた
その音を辿れば何かがありそうだ
そう思った少年は坂道になっている道を歩んだ

風鈴の音を辿るとそこは民家のようだった
しかしただの民家ではなく何かを展示してある

よく見るとそれは陶磁器だった

気が付くと母親が急に傍に立っていて陶磁器を眺めていた
ほら、きれいな模様ね
これは


いつの間にか父親が無言でその様子を眺めてる

こっちにはもっと大きな窯元があるわよ
母親にそう促され立派な技を施した磁器がある

大きな壺や動物を形どった立派な陶磁器が展示してある
笑い合いながら少年はそれらを堪能した

楽しい時間だった
こんな平和な時がずっと続けばいいそう少年は感じた


そろそろ帰ろうか?
そう小年が促すと

そうね、
母親は少しうつむいて
何かその表情には残念さとせつなさが表れていた

父親はまっすぐ少年の顔を見て
お別れだコウタ
父さんたちは別の世界へ行くよ

駄目だよ置いてかないでよ
気付けば病院のベッドに少年は眠っていた

気が付いたか
君は生き残ったんだよ
白衣を着た老人がそう告げた

僕は一体
左手にしっかりと握られてる粘土のかたまり
少年は今自分に降り注いでる境遇を握りしめるかのように噛み締めた
さようなら

2008年1月1日火曜日

サバイバルマックス

注意
この文章には残虐な表現が含まれています
お読みの際には気をつけてご覧ください




何処にでもありそうな郊外のディスカウントショップ
空はどことなく殺伐とした空気を醸し出していた
とある午後2時
30代前半の男が店に悠然と入っていった
バイトの女子から
入り口の買い物かごを持ち出す場所で小銃をもらう
午後3時
店内からアナウンスが流れる
さぁ今日もサバイバルマックスが始まります視聴率を保つためにもがんばって死闘を繰り広げてください

男はそのアナウンスと同時に殺人マシーンのように殺気に包まれる
息をひそめ左のコーナーへ進む
電化製品のコーナーここではハイビジョンなどの薄型テレビが展示してある
男はめぼしいテレビを傷つけないよう前に進む

後ろから声をかけられた
気づけば老婆のようだ
あんたここがどこか教えてくれんかね何かと方向音痴でのぉ
老婆は必死にしがみついてくる

今サバイバルマックスだと知ってて聞いてるのか
おお、おぉ物騒なものを抱えて儂に預けてくれんか?
小銃を取り出そうとした瞬間老婆の後ろから誰かが出てきた
サイレンサーを装着した銃は
老婆の体をぞうきんの様に撃ち抜いて自分をしとめた
キュンキュン ガン!ガン!ガン!
間髪を入れずに小銃で応戦した
右の脇腹にかすり傷程度の怪我を負ったが
相手の急所に命中していた
この老婆はいわゆるかませ犬だった

狙った人物覆面をしていて表情さえ解らないが痛みにもだえている
このまま死なせてやるかそれとも

そう考えてるうちに午後4時終了した
おつかれさまでした今日も生き残る事が出来た人達にはこの店から好きなものを一点贈答します

男は大画面のプラズマテレビを選択した
自宅に帰って寝そべって見ていると
今日のサバイバルマックスのハイライトです
明るいナレーターの声が悲しく響く
ドラマのクライマックスを見てるようだ

俺は今日もまた一人をやってしまった
剣奴の様に殺し続けなければ生活も未来もない
相手はたとえ犯罪者や敵対国の捕虜、宗教犯罪者
それでも引き金を引く時震えがくる
奴らも必死なんだ
俺も人間だ

だんだんと夜が更けてゆく中
俺はこんな身分に生まれた以上
抜け出せない 戦う事でしか自分を表現できなくなった
しかしもう後少しだ
こんな残虐な企画
時代が変われば人も変わるむしろ逆だ人が変わるんだ
男は英気を養いながら次の戦いに備えた
何時最後になるか解らない袋小路にたって