2008年11月22日土曜日

流星

社長ついに百万台突破しましたよ

そうか・・・よく今までやってくれた
何を言ってるんですか
みんな社長の陣頭指揮のおかげでここまでこれたんです

あぁそうか・・・

すでに白髪がちらほら見えだした50代の吉野は窓から遠い景色を眺めながらそうつぶやいた

あれからもう30年
感激するにもすでに精も根も尽き果てたといった感だ
ここまでの道のりは決して平坦ではない

何度も何度も訪れた悪夢のようないや今ではほほえみに変わるような苦労を思い返していた

何かおもろいことないか?

大学時代
勉強そっちのけでプログラミングにいそしんでいた吉野は
必死で面白いと感じたゲームをコピーしていた

そのゲーム、キャラが落とし穴に入り込むアルゴリズムが絶妙だな
まるで生きてるようだ

ねぇこっちのゲームはどう?
そう呼びかけた
黒縁眼鏡をかけた少し異様な出で立ちをした牧沙織は吉野のよいサークル仲間であった

向こうの学校から新しいソフトを借りてきたよ 
親友の神裕喜

悪いね二人とも

ねぇあなたの書いたプログラムテープに焼いて一度公開してみたら?
きっといい結果が待ってると思うわ
沙織は吉野に勧める

だめだよこいつが2年半を費やして書いた物だ今更公開だなんて なぁ
神はどうも保守的というかあまり成果を発表したがらない質だ

う~んでも
今までコピーをしてきたゲームに携わってきた世界にそろそろ恩返しがしたい
対価を求めずフリーでいいだろ


吉野はプロから見れば少々無駄の多い
稚拙な面を除けば荒削りのある光る素質を秘めていた
純粋に何かを追い求める
街のありとあらゆる場面に出ても吉野は無駄にしない常に面白いことを見つけ突き詰め
壁を作らなかった

その点あってかまちでかくれんぼをしていたわくわく感をゲームで表現できないかと
ドットのキャラクターを駆使しシナリオを書いてストーリー性を持たせ
プログラミングも簡素でもキャラを意のままに操れる操作性を実現し試行錯誤を重ね完成させた

ハイド ディバイド

タイトルは思いつきだが
敵キャラに見つからずにいかに美しく陣地を占めてゆくか
今までのパターンを踏襲した物だったが
ネットも普及してなかった頃全国から問い合わせが殺到した

その頃のゲームは今では考えられないくらいバリエーションも豊富で
新しいゲームをする度にそうか、こんな手もあったのかと驚く
小粒でもぴりりと辛いゲームにあふれていた

そんな幸せな時代
吉野は学校を卒業するとき

二人にこういった
二人とも研究室に残るんだってな
あぁおまえはどうする、神は少し暗い表情で尋ねた

しばらくは遊んで考える

就職はいいのか?

最近濁ってきたんだ自分が何で面白い物を作りたがってるのか
そんな調子じゃどこにも雇ってもらえないし失礼だと思った
それよりおまえ達そろそろ・・・

今まで気付かせてたのにごめんね
私たちもうすぐ・・・
沙織は神にぴったりとくっついた

そうか・・・
でもここでえたことは決して忘れはしないよ
特に沙織
面白いことはどんどん世の中に広めても何ら困ることはないんだって事を
それを教えてくれたね

吉野は出発した
ここからが本当の船出だ
そう自分に言い聞かせ

あらゆる波に揉まれることを想像だにせず

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