何層にも連なる高層ビル。今朝も排気ガスの湯煙が上がる。
ちょっと深めのコートに身を包んだ老人が路上で販売している果物屋に話しかけられていた。
会長今日も良い天気ですね。これ包んどきましたどうぞ。
ぱんぱんに膨らんだ紙袋を老人は受け取ると
うんありがとう。
小さく会釈をしてある高層ビル、大企業の本社の入り口へと足を入れた。
受付でチェックインを済ますとビルの最上階にある自分の部屋へ
ここが今は一番落ち着くな・・・
そうつぶやくとコートを脱いで自分の手すり付きのふかふかした椅子へと腰を下ろした。
しばらくすると秘書が現れる
会長、お久しぶりです
うん、今日は晴れ晴れしいね。
早速だがスケジュールを教えてくれ
一時よりSWE社のワンツ会長と会食を
その後は株主様のシンポジウム
夜は政治家の木村様のパーティーが。
そうか・・・今日の夜はうちの孫の誕生日らしい
可愛いが、とんと自分の顔を覚えてない。
会長、それともう一つ
例の商品開発部長が至急10億円の開発資金を要求していますが
いいよ
は?
自由にやらせればいい。
私に出来ることは今まで釣った魚を放流すること
私は彼を信用しているし夢を持っている人間を資金面で困らせるようなことはしたくない。
はい、もうしつけておきます。
老人は紙袋をまさり、いっかのレモンを取り出した
シャクリとそれをほおばると涙が一粒落ちた。
皆天国へ行ってしまった、私の敬愛する人は。
もう自分は生まれ変わることなど無い、
私に最大の贈り物をしてくれた。
綺麗だよ。
今この目に映るものも
美味しいよ
この果物も
老人は少年のような目で黄昏れた。
街から外れた閑静な住宅街
その街の中に一校だけ高等学校がある
私立でお嬢様しか通えない学校とされている
ねぇうちさぁ、今日誕生日パーティするんだ。
本当?
兄さんは多分彼女とデートだけどおじいちゃんがたまに帰ってくるの。
美咲のおじいちゃんて確か大企業の会長じゃなかった?
よく知らないよ、でもプレゼントが豪華なんだ
みんなびっくりするくらいの。
それくらいしか印象にないなぁ、でもいい人なんだとは思う
無口だけど、私の顔はよく見ていた。
あんたも来る?
そう呼んだのは美咲がライバル視している祐子
私はいいわ
そうよねあなた自分のこと以外無関心だものね。
この言葉が気に触ったのか
突然目の前に現れた
行かせて貰うわあなたの誕生日パーティ
でもお祝い事だからお互い親しくしましょうよ
そうこなくちゃね
美咲は舌をぺろりと出した。
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