2009年5月11日月曜日

リフレイン

ほら彰、あんなに山からの風景は綺麗。

あぁかぁさんそうだね

ここで昼食でもとりましょうね。
待ってて車からとってくる。


いつからだろう車や他人の歩くスピードがジェットコースターのように感じられるようになったのは
俺はあの日以来人生ががらりと変わった。
五体満足だったとき、でも時間を垂れ流すだけの空虚だった時代。
バイク事故で下半身の自由を失うまで・・・

気付かなかったことに囲まれすぎていた。
いますって吐いている空気もおいしい

一歩も自分の力で這い上がることが困難だからまるで赤ん坊のように未知なることだらけになった
そして人間関係の絆を知るよい機会にもなった。
去って行く人もいたけれど、残った人はみんな自分を誇りにしてくれた。

あれ以来感受性も花開いたのだと思う。
何気ない日常にたくさんの出来事を感じるようになった


お待たせ、今日はサンドウィッチにしてみたんだけど好きかしら?

あぁかぁさんの作るものなら何だっておいしい。

駐車場の展望台から眺める街、体が未だ自由だったとき何度も訪れた。
人間は意識し始めたときが始まりだと思った
それまで水道の蛇口からひねれば出てくるもののようにとらえられていたから

かぁさん、もう帰ろう、家族が心配するよ

そうね、あなたは自分の時間の大切さを誰よりも知ってる

事故にあってショックだったのは家族も一緒でこれからだと思った人生が急に足下が泥だらけになった。
障害者に対する偏見は見えないところで大きい
目を合わせる度ばつの悪い表情をいろいろな人から浴びせられた。

傷ついたと言うより悔しかった。
なぜ周りの人間をもっと真剣に見なかったのだろう

都合の良い人間は皆あっさりと去っていった

彰、あまり考えるのはおよしよ
かぁさんは自分が神妙な顔つきをしているときはどうにもならないことを考えていることを知っている。
車は三キロ離れた小高いおかの麓にある自宅へと進む




この書類、ボランティアから回ってきたのね
担当は・・・


はーいこっちです

区役所の窓口に新人の若い女性

こっちの窓口はまだかのう

はーいただいま
え~と障害者手当の支給ですね。この部分に署名と捺印を。


私は今一番充実していると思う。
仕事は先輩の雑用と事務手続きだけれど
人に囲まれて自分が活躍できる場所を与えられていることが幸せ
何となく今の仕事が好きだから将来はもっといろいろな人に囲まれたい


学生時代から全てが一期一会だと言うことを悟り、思い出をたくさん作ろうと心がけた
今もそれに支えられている

則子さん

はい、何でしょう?

今日は障害者のスポーツ大会があるんだけど見に行く?

いいですねぇ、是非

思い出作りはまだ始まったばかりだ。

続く

0 件のコメント: