虎視族は誰の力も借りずに出産する
生まれてくる子供は宝であり
唯一無二の分身でもある
独りの女が静かに生命を産み落とした
その涙は二つの結晶となった
白い結晶、黒い結晶
自分の子どもだけに伝えられるモノ
まだ赤ん坊だった二人の子供の額にその宝石を埋め込んだ
子供の額に激痛が迸った。
白い毛並みの女の子
燃えるような黒縞の男の子
二人は正反対の基質を持っていた
何でも吸収する白い目
どんなものでも追跡できる黒い目
女は幸せだった
たとえ自分の命を引き替えにこの子供を産んだとしても
静かに息を引き取ったその後二人は乳母に育てられた
愛情はふんだんにあり
二人は何ら不自由なく生活をしていた
ところが、虎視族の村は何者かに襲われてしまった
命からがらに逃げ
二人は乳母に崖から突き落とされた
生きて戻ってきて欲しい
それまではどんなことも耐えぬいて欲しい
女は深く悲しんだ
気がつくと二人はだだっ広い荒野に落とされたようだった
男の子の千里眼で見渡すとどこにも何も広がってはいなかった
諦めよう
こんな場所では希望もない
そう言って踵を返そうとすると
兄ちゃん、母さんと約束したはずだよと
絶望や悲しみを不思議に吸い取ってくれる目で兄を見つめた
そうだな
二人は歩き続けた
何も無い荒野を
ただひたすらどれだけ時間が過ぎたのかも分からない
倒れても倒れてもひたすら前を向いて
気がつくと男の子は独りだった
ベッドの上で
兄の方は介抱されていた
僕は
ベッドの上で誰かが話しかけた
良く気がついたたね
記憶がほとんど抜け落ちていた
自分の名前も年も素性も
ただ三人の面影以外は
もう心配することはないんだ
私たちは君を助けに来た
男は母親からもらった黒い宝石が額にあることを確認した
これからそれで見てもらいたいものがある
男の子はまだ誰も知る由もない世界へ足を踏み入れようとした
ここまでいろいろなことを書いてきて
ひとつだけ悲しいと言うか腑に落ちないことがあった
それは自分で自分の物語を信じてあげれなかったこと
どうせフィクションだからと言った安易な考えは
創作姿勢にものすごく負荷を与え読み手に疑心も与える
テレビ、インターネット、本だけの情報では
払拭できない
人の話を直に聞かなくては自分の納得する物語はかけない
しばらく誰の力を借りずに自分の世界を構築する
それまで筆は休める
それが溶ける日が明日かもしれないしいつになってもこないかもしれない
しかし、何かを描きたい伝えたいというきもちは大きくなってるのだから
自分のやっていることは間違いではなかったと思う
新鮮に物事を描ける日々に感謝します
一月四日
午前七時二十二分
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