2008年2月10日日曜日

交差点

レコード店や会社からは到底目を付けられるはずも無い沢田は
路上で自分の居場所を確かめる事にした
小脇に自主制作盤を置き
機材もろくに使わず
ギター一本でライブをした
目の前は真っ暗で誰が聞いてるのかも解らない
ただ入れ替わりが目まぐるしくまるで走馬灯の中で歌ってるかのようだ

そして路上ライブも佳境を迎えた頃
一人目の前に立っていた
20代くらいの健康そうな女性

沢田の横にあるものをさして
あれ売ってるん?
うん一枚500円
そのCDを一枚拾い上げると舐めるように裏表を見て
売って、これ売ってや
ええ歌やん

沢田は自分に共感できる人がいるという事が意外な事に思えた

明日は?
え?
明日も歌うん?
仕事が終わったらすぐにくるけん

今まで直接感想や売れてゆくのを見た事が無かった沢田
独り占めにされた自分がなんだか面映い
しばらく考えてなかった事
歌で誰かを幸せにしたい
大切なものをもう一度手にして
次の日
なぜか昨日から喉がいがらっぽかったなぁと思ってたら風邪をひいていた
体調を優先させて
今日は路上でライブをするのはやめよう
約束してたけど明日になったらきっと俺の事なんて忘れてるだろう
勝手な思い込みで封鎖してしまった

沢田の歌詞に恋愛など微塵も入ってはいなかった
死生観、終末思想
特に社会への問題意識も顕著だった

沢田は歌詞もそうだが曲調にも特徴があった
和田を含めても生のドラムが無いユニットだったので
一人で何役もこなすケースが多かった
結果色々な経験が部分部分に生きている
しかしボーカル、ギターを捨ててもボーカルだけは譲れなかった

ふとギターに目をやる。あいつあれ以来話しかけてこないな
やっぱり俺の思い過ごしか・・・・
すると
歌を詩に変えるならどんな状況でも歌い上げれるもんだ
自分のため誰かのため未来のため
この3つを程よく織り交ぜる事が出来たのなら
私はお前の思うままに奏でてみせる

あぁ音楽は辛いさ
作る時も発表する時もその後の反響も
沢田は時計をちらりと見たまだ6時しか回っていない
まだ間に合うかな
ギターを持って一目散に町へ駆けていった

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