町に出ると沢田は辺りを見渡した
辺りにはまばらに人が点在していた
なぜかこの日はストリートミュージシャンの姿はあまり見ない
シートを張って座り込む
沢田はこの日のためにとっておいた歌を全部披露しようと思った
決して見せかけでもごまかしでもない歌
胸の思いを伝え
自分でも少し恥ずかしいものでもある
あぁ俺はこの日のために音楽をやってきたんだな
短い感慨に浸りながらも沢田は心酔した
演奏が始まって間もない頃一つの異変に気付いた
誰も周りには立ち寄ってくれない
むしろ避けている
沢田はちらりとも見てくれない人の波に疎外感を覚えた
そして誰一人としてみてくれないまま演奏は終わった
沢田は複雑だった
俺の音楽は少しおかしい、少し間違ってる
そう思ったとき静かに拍手の音が聞こえてきた
静かに近づいてきたのは昨日の女性だった
いきなり
あんたもう絶頂やわ
私の中で最高のヒーロやわ
それはどうも
沢田は慰めか弔いにしか聞こえなかった
待ちたまえ
私は某レコード会社の社員なのだが君一度デビューしてみないか?
この子はうちの社員で君をずっと見てたんだ
今日の歌が一番あんたらしかったよ
みんな酷いな見てるなら見てるって
すると大勢の人達にいつの間にか囲まれてるのに気付く
この人達は?
あなたの歌をずっと待ち続けてた人
行こうよ次のステージへ
立ち止まっちゃ駄目
沢田は膝を落とした
ただ自分を必要としている人達に囲まれる事がこんなにも沸き上がるものなのだと
大粒の涙をぽとぽと地面に落とした
おわり
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