2010年4月12日月曜日

黒い夢 The return of mother brain

また夢を見ていた
写真が侵食されてく夢
俺の思い出はどんどん黒く塗りつぶされる
大切な思い出、思い出したくない思い出
暗い漆黒は自分を僅かに残し何もかもを飲み込もうとしている

為す術がないわけでない、自分に納得させるのだ
わずかでも良い自分が残りさえすれば


師走の朝
タイマーでセットしていたテレビが突然つく
CMの素っ頓狂な音
きょうもまだ意識ははっきりしている

シャツは寝汗でぐっとりと濡れていた
換えを探さなくては
3LDK
の自分の部屋に忘れてはならないものがあった

息子だった

朝ご飯の準備は勝手にしてくれて助かるのだが
お弁当の準備は自分がすると決めている

しまった寝坊した


息子はナニも言わず黙々と自分の作った卵焼きを口に含んでいた
ブラウン管の光が瞳に反射している様はまるで自分を受け付けてはくれない

終値を聞いてなかった
そう、思うと株価のニュース

TOPIX
-256ポイント
今更この景気を他人に任せるわけには行かない
しかし景気の動向は知っておく義務がある
この年になり全体の流れの大切さを学ぼうとしている


息子はミルクたっぷりの珈琲と、カリカリのトーストは欠かさず食べる
俺も同じメニューを消化しきょうに備える鋭気を養う

行ってくるよ
あっさり息子は食べ終わりカバンを背負って高校に向かった

あっ待ってくれ
今日の昼飯代だ
そういうといちまいのお札を渡す

息子は深くため息をついた

相変わらず悪いね

それがお互いの暗黙の口癖

妻のことを思い出す
結婚には慎重だった
実際生活してから気づくことが多いのは周りを見て腐るほど知った

美しい女性だった
当に非の打ち所がなかった女性
出会った時はそうだった

しかし愛されているのは自分ではなかった
子供ができて豹変した
ショックだった

飽和状態が限界に達したとき
離婚を考えた
子供は自分の意思を尊重させるということで
どちらかを選ばせた
そして俺を選んだ

妻は深く悲しんだ
妻が愛していたものは多分自分の届かない美しいもの

また、頭を下げ馬鹿げたことでも納得させなくてはならない自分がいる
ましてや生活のためだけでもなく子供のためだけでもない
自分自身の真理をぽっかり見つけること
そう思えば傷つくことすら怖くなかった

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