2010年6月5日土曜日

Post

敵のマークを掻い潜るのが好きだった
誰にも寄せ付けない比類なきパターンとスピード、そしてパワー
俺のポジションはポスト
シュートを打つことはあまりなくとも味方のシュート筋を開ける役

ハンドボールはゴール前で如何に華麗に舞うかが見せどころだ
その瞬間は自分だけでいい
キーパーに弾かれてもついてなかったと思うだけでいいんだ


試合は行うにつれどんどん険しい敵が増えてくる
パターンを身につけよう
仲間との連携をもう一度練り直そう

考えることは沢山ある

それでも試合は楽しい
ドリブルで立て直すときでも
味方にパスをするときでもいつでも考えている
この時全てが幸せなときだ


放課後の体育館

独りゴール前でシュートの練習をする俺

ボールを脇に抱えて思いっきり汗をかいていた

よぅ
朝練の後は放課後で居残りか?

タッパが190センチはあろうかという日焼けのまぶしい男が立っていた
名前は加藤

独りの練習のほうが楽しくて
これは居残りなんてものじゃない

ポストにしちゃがむしゃらすぎるな
少しは監督や仲間と打ち解けろよ


お前のシュートの道筋を開けるとき
感慨深いんだ
何をやるにしてもオマエのことが少し理解出来ているような気がする
加藤
俺は羨ましいよ


いつもありがとう
そんな言葉がいつも思い浮かぶポジション
華麗なゴールには御膳立てもアシストも必要だ

明日の練習紅白試合だそうだ
前田
レギュラーを不動のものにするチャンスだぞ

あぁぬかりはないさ

以前気まぐれでシュートをはなったことがある
その時のキーパーの放つ眼光が忘れられない
あまりの鋭さに反らしてしまった
自分の素直なゴールに対する飢えを
もう素直なボールを放てない
それ以来道筋を開けるポストに専念しているのだが
いつだってゴールを狙える位置にいるのなら狙いたい
おれだってまだあの瞬間に喜びを感じたい
全ての結界から解き放たれその先へと進んだ世界

もう休めよ
体調は大事な日に備えた方がいい

汗が頭皮から吹き出している自分を見て加藤は言った

そうするよ
俺はイメージトレーニングに切り替えることにした

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