真夏のむしむしした熱気が体をねちっこく捉え始めた
額を拭って少しばかりしのいだ
熱さは容赦しない
まともな思考能力は湧かなかった
家の近くの川には散歩で犬を連れている人々やベンチに横たわる人
水浴びをしている小学生たち半裸で笛を強くならしてるものもいる
うつろに目に映ってきた
自分の家に帰るなり
友達から破格で分けてもらった合法ドラッグをほおばる
鼻から何かが吹き出てきそうな恍惚感が襲った
母親も父親も既に自分は独立した個体だと勘違いして
何をやるにしろ無関心だ
だから好き放題にした
財布をのぞくとドラッグを買う金があまりない
アルバイトにしろ仕事にしろこんな挙動不審でみすぼらしい自分を雇う余裕などないはずだ
財布からごっそり抜け落ちた札束
以前コンクール 出版社のコンクールに応募して賞金をかなりもらった
論文にしろ感想文にしろつぼを押さえれば人の心をわしづかみできるものだと
妙に納得していた
今は微塵も無い
ドラッグはすぐにでも辞められる
しかしこの崩れかけた人間関係を修復する体力は無かった
部屋で天井を眺めてると俺はなんで生きてるんだろ?
ホルマリン漬けの死体のようだ
考えるあれこれどうにもならない現実を堂々巡りで考える
そのうち袋小路でもがく自分が少し快感に映った
誰か上で俺の全てを否定する夢を何度見てきたか
才能があれば
確かに金に換算できる才能
いや人を呼び寄せる才能があれば
凡人とはこうも苦しく虚しく時は過ぎてくのだろう
次の日女友達の香織が遊びにきた
仕事が早く終わったから会いにきたという事で
なんかとても違和感がない
会った当時私風俗でバイトしてるんだという言葉にたじろいだが
なんのことはなかった
彼女はその事実を吹き飛ばす以上に澄んだ瞳を持っていた
審美眼
人を見ぬく目
しかし麻薬を常習していたせいか
何度も施設を行ったり来たりしている
今ではヘビースモーカーで時折笑う歯はとても黄ばんでいる
呂律が回らなかった時は何を言ってるのかわからなかったが
自分より遥かにシンプルに考え行動してる姿が強く離れられなかった
最近至らぬ考えが浮かぶのを阻止してくれる貴重な人だ
次の日珍しく母親が神妙な顔をしてこの部屋に入ってきた
今日は折り入ってお願いがあるの
そろそろ一人で暮らしてくれない?
ほらあなたもいいとしだし
世間体やこれからの未来も考えるとどうしても離れるべきなのよ
俺は一つ返事で了承した
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