2009年3月8日日曜日

黒の女性

次の日会社で上司から大目玉を食らった
何のための営業なのか、もし今度背くような真似をするなら即刻首だと
当然といえば当然
会社の責務を自分の秤にのせて判断した
だが後悔はないもしもあそこで自分の正直な思いを具現化しなければ俺は一生
嘘つきになってしまう

綺麗な物はなぜか儚いしとげもある、
きっと私永物不動産も社長や上司が判断する余地がある

言葉は少ない方が良い
必要最低限の意思が伝わる

電話の留守録に
服部です今度お食事しましょう
都合の良い日を待ってます

なぜか商談ではないことが如実に伝わってくる

自分は今まで自分勝手だ、会社のことを思い返せば給料を貰ういがいなにものでもない
チームと一体感を味わう日もある
しかしそれ以上のものでもない
忠誠心というものがあるのなら一桁を切っている

なぜこんな自分でも働かせて貰っているのか
仕事が自分のためだということを誰よりも敏感に察知できているおかげかもしれない

ただ合理的にばかり走るのも嫌だ
時には感情をむき出しにしてたとえ同じ会社の同僚でも本気でけんかすることを恐れないで

日曜日
近所の公園でボーと歩いてると
偶然目線がかち合った
あの赤ん坊を押していた老人
多分自分の記憶をたどるとそうだ

今日は黒目がりりしい大きな犬を連れていた
やぁまた会いましたね
自分はいきなり声をかけられたような気がした

飼い犬は皆愛想が良い
幸せだからとか人が好きだからとかそれよりもゆとりが感じられる
人間はゆとりのある人でないと笑顔は生まれない
きっと今みたいなかつかつの生活の中では唯一笑顔というものには困る
他人に出せないのだから尚のこと苦手だ

朝、出勤するとまた上司から呼び出された
今日はこの会社と契約を交わしてくれ
80%の出資で完全に買収するとな

しかしこの会社は今までさんざん世話になった会社でもあるはず
特にうちが零細企業の頃から二人三脚でやってきたというのに

何か聞きたいことは?

あ、いえしかし向こうが断ってきたら
私たちは完全に向こうの財務はお見通しなのだよ
三年近くかかって骨抜きにした
頼むよこれいじょうの成長を維持するには拡大路線しかない

少しだけ複雑な思いだった
現に根回しでつぶすような会社はごまんとあるのになぜあのような
忠誠な会社を乗っ取るのか

会社の命令に疑問を抱くのは今日に限ったことではない、
だが・・・


6階建てのこじんまりとしたビルの一室
どんな言葉を吐けば相手が傷つかないかをじっくり考えていた

お茶をどうぞ
そういっていきなり目の前に現れたのは
少しふくよかで黒のスーツを着た女性だった

最初から満面の笑顔で瞳に今にも吸い込まれそうだった
女性はにこにこしながら書類にチェックを入れていた

今日は大事なお話なんですよね
笑顔がますます深くなった

俺はいつの間にか業績はどうですかと聞いてはいけないことを聞いてしまった

ええ
この世知柄厳しいものがありますけれど
私たちは最善を常に尽くしてますとくに昔からのクライアント様には

その話なんですが あの

自分の言葉が出かかった瞬間

その女性は日頃からお世話になっている貴社にはもう感謝の言葉が見つかりません
用件なら何なりとお申し付けください

俺はいつも笑顔な女性の目が一瞬光ったのがまぶしいほど痛かった

全ては悟られている
ならば話は早いのではでもそれではない

まっとうな人間は食いつぶされ残った人間が一つの頂を熾烈に奪い合う
こんな事で企業文化が生まれるはずもない


俺はこの女性の前だと嘘がつけない
だったら正直になる
もうお互いが助け合って生き残る時代は終わったんだ

疑心暗鬼なおれの表情を見て女性の笑顔は止まったままだった

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