2010年10月22日金曜日

五月雨~みだれ

ここには山も川も空もある
誰も立ち入れない場所
左手にあるもぎたてのかきを頬張る
川のせせらぎ
山のざわめき
鳥の鳴き声
皆一体となる
頭が自然と浄化されてく
こんな時間がなければ俺は腐っていくところだった

若、そろそろ時間ですが
後ろで待っている家来たちが迎えに来た
そうだな
俺は本丸に帰ろうとした

ときは西暦1598年
いまの歴史とはパラドックスを起こし
産業革命がいち早く起きた
パンゲアと呼ばれる大陸
俺達はその極東に住んでいる
ジパングという
そして園にしにある繁栄を極める帝国
ブリテンという
二つの国はともに繁栄を築こうとしていた
俺達はちょんまげや刀すら捨てられない世の中に
相手は既に拳銃やテレビやラジオを持っている
俺達の文明は開花した
しかし昔の古きよきものを引きずって
相手から言えば奇天烈な国になってしまった

本丸で静かに食事をとっていた
がらんどうな空間でいつも独りでメシを食う

若、母上がお呼びですが
突然女中が入ってきた
そうか、しかし食べ終わるまでここには入ってはならないぞ
俺は厳しく注意した

母は本丸の離れた女だらけの空間にいる
普段は足を踏み入れないのだが
最近女たちの動向がおかしい
ちょうどいい俺も話がしたい
母は14歳で俺を出産した
世継ぎを生むために半ば強制的に結婚して
父親との愛情は多分余り無い
その複雑な関係が俺をまた苛めるのも事実
真一
ここにいたのですね
母上
何か御用ですか
これ以上自分の時間を必要以上に持つのはやめなさい
あなたにはやるべきことがあるのです
例のブリテンのことですが

あぁまた彼女に会いに行きます

一つ忠告します
あそこは女だけで作られた国なのですよ
何か?
お前にはまだわからないのです
母は意味深な言葉を残して去っていった

またブリテンから物資が届きました
あの国は世界中の至る所からいろいろなものを集める
見たこともないものがゾクゾクと送られてくる
甘いモノはあまり食べたことはありませんか?
これはバナナと言ってこうやって皮を向いて食べるのです

若、そろそろ父上が帰ってきますが
あぁ今日は会わないと伝えてくれ


爺やと風呂にはいるのが日課だった
西洋の風呂はこうやってみんなではいるのが嫌いなんじゃ
背中を流しあうこともしないだろう
文化の差以上に埋められないものがある
それが男と女じゃ
ここには男と呼べる人間は三人しかしない
しかし
ユッミーがお前の顔をしきりに見たいと言っておるぞ
俺は背中を流す手を止めた
3日ごまた会いに行きます
しっかり護衛をつければ心配はないな

父は疲弊していた
あらゆる国に根回しをしなければこの国は崩壊するかも知れない
特に俺はこの国に対するビジョンがあった
これからはオープンにならなければいけない
ブリテンの目覚ましい成長を横目に見てそう思う

またあなたなの
母は父にいつも辛く当たる
真一をあの国に暫く贈ろうと思う
もう交渉は決裂状態だ

あなたは知らないのよ
その場しのぎその場しのぎ

これは婆やのアイデアだ
お前は文句を言えない
女の恐ろしさを知らないあなたに言うのは酷だけれど
あなたは既に男としてはお払い箱なんだから
すまん分かってくれ

あんたなんか大っきらいよ

明朝
大きな軍艦が港についた
護衛艦三隻、駆逐艦六隻
船から出る煙ははるか天につながるかのように仰々しい
物々しい旅立ちの始まりだった

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