明夫は俺の目の前で四つの装置を立体的に配置した。
人為的にブラックホールを作ると言っているが
そんなことが今の科学で可能なのか
問題は重力に耐えきれなくなる空間に危惧した
バレたら俺は勘当されて少年院行きだ
もちろんそんなことより大きな好奇心が、俺を駆り立てる。
明夫はブラックホールには特異点がある
物体も光もそこを通過するとどこへ行ってしまうか分からない
ホワイトホールというものが立証されれば話はシンプルかも知れない
しかし、そんなものは見たことがないという
わかるのは極微小に発生する空間の歪み
ワームホールと呼ばれている
この穴を拡大して時空を行き来するという算段なのだが
あまりに無謀すぎやしないか
何が?
もし、最悪の場合俺たちだけの問題では済まされないような
なぁお前は人生において戻れるとしたらいつの時代に帰りたい?
俺は一生懸命考えたけれど
科学も文明も殆ど無い様な世界に戻りたい
だってワクワクしないか
心だって意識だってその頃は剥き出しだったに決まっている
俺は原始に帰りたいんだ
そのための科学なわけか
ところで俺は初恋の頃に戻りたい
ちょうど小学生の高学年だったかな
そんな時代に戻ってどうするんだ?
自分に言い聞かせる
気持ちをはっきりさせるべきだったんだって
風子のことか・・・
俺は今でも後悔している
未熟だったあの頃
少しでも相手に笑顔をみせていれば
気持ちの本の一部でも伝えられたら
風子を傷つけることはなかった
彼女に言わせれば本来愛すべき人以外から骨抜きにされ
素直に感情を示さなくなった
意外とペシミストなんだな
なんだか分からないようでもないけれど
俺の辛気臭い過去より
お前の目的を果たすために俺は尽力するよ
遠くで何かが鳴ったような気がした
四つの装置から生まれた黒い空間は大きな風とともにあらゆる物体を飲み込もうとした
あら今日は風が強いわ
公園で犬の散歩をしている主婦
数子はただならぬ予感を感じながらも平静と過ごしていた
0 件のコメント:
コメントを投稿