緊張は最高潮に達していた
今まで通り行けば勝てる
そう言う確信をもとに全身スーツに身を包んだ
またしても並ぶと体格差がもろに出る 筋肉も背もみんな劣ってるけれども俺には武器がある
スタート台に立つと下を見るのではなく遠くをしっかり捉えた
負ける気はしない
号砲が鳴る
なるべく勢いよく着水するのではなく遠くへ飛ぼうと思い太ももに思いっきり脚力をかけた
ゴボゴボ
水の音が耳に響く
そして俺の武器入水して潜水をなるべく短いインターバルで足をストロークさせる
長時間する事は今までの常識では無かった
自由形では
ドルフィンキックは体力の消耗をどちらかというとおさえるのかもしれない
30m付近で顔を出す既に一位は5mライン付近まで進んでいた
体は決して柔らかくないのにドルフィンで進んでる時は水に全く逆らわないような気がする
50の折り返しここでもドルフィンキック15m進んでいよいよラストスパート
今までほとんど水を手でかいてないので全力で疾走する
ライバルはまだ見えない
5m付近になってようやく足を捉えた
だが届かなかった
ラストスパートが足りなかった
コーチから序盤から気持ちよく潜水のし過ぎなんだ
最初から相手の事など考えず全力で潜水なり腕を振れ
距離は縮むとは思っていた
自分の実力ならしかし一番にはなれない
誰もやらない常識をやってみても勝てない
俺は体の衰えをそのうちに思い知り
手遅れだったあの勝利への余韻へ二度と浸る事は無かった
音楽を聴いていた
とたんにいろいろな情景が浮かぶ
懐かしい曲10年前以上の自分がまだ青かった時代に貪っていた曲
テレビで視聴する事も今はでき
プロモーションビデオと呼ばれる販促用の映像をそのまま流してるだけなのだが
カット割りが早く結構自分の映像に参考になる
というのも映像をもとに昔は構築していたから
飽きっぽい自分、あきれるくらい気が多い自分
何事にも限界がある事を信じていた
何かに刷り込まれるまでは
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