雨だ
こんな日は何処へにも行きたくない
ルームメイトは青年の冴えない顔を見て
あぁあいつになったらあの絵を見る事ができるのかな
もしかしたら未完のまま私達離ればなれになるのかな
完成するさ
今までがそうだったんだ
強い意志が青年にみなぎった
またペンを取る
顔がぐしゃぐしゃになって泣き腫れたかおの絵を構想してみた
いままでにない他人に流れるような不快感を与える構図だった
こんな絵誰が飾りたがるんだよ
と
内なる声のもとすぐに却下になった
今必要としてる絵はなんだったんだろう
外の空気を呼び戻さなくては始まらないと外出した
街で買い物をしていたら突然土砂降りにあった
当然雨にそのまま濡れ急ぎ足で家に向かう
止まり木にまたあの少女
2度とはなしかけまいと心に決めていたが
なぜか体半分ほどのスケッチブックを大仰に開き何かを描いてるようだった
こんな天気にいったい何を?
さすがにこっそり覗き込むのは抵抗があり
やぁ、
気付く範囲でこっそり注意をさそう
意も介さないまま接近する
風船?
こんな雨の日で周りは街路樹だらけなのに
無機質な風船を何重にもかさねている
これはむしろ周りを見てスケッチをしてるのではなく
雰囲気を察知して描いてるのだろう
おもったより機敏な鉛筆の動作はまるで何かを封じ込めるような
急いで空気を真空パックにでもしてる雰囲気だ
人がこうやってかいてるすがたをまじまじと見るのはその時が初めてだった
自分の描くスピードがどれくらい遅いかがわかる
少女は突然動作をピタリとやめ
自分の斜め前を察知した
やっぱり失語症なのか
口を2〜3度ぱくつかせた
ごめん
いや自分のまちがった解釈かな
多分そんな感じの言葉を自分に投げかけたような気がした
でも
うらやましいよ
俺は自分の部屋にこもってしか鉛筆は進まない・・・
たまに外の空気を察知して描こうと思うけど
何も感じない
いや何を描けばいいのかわからないんだ
少女は耳に話を入れながらも鉛筆をとめなかった
風船?
深くは考えないようにしたが
外界との繋がりをそう表すのなら
自分にとって
環境って何だろ
その日は
小一時間ばかり描く姿をずっと眺めていた
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