2010年3月13日土曜日

優しさ

都心に近い古びた歓楽街
木造の趣きのあるラーメン屋が一軒有った

中には笑うと皺がゆっくりと現れる落ち着いた老人が独り

ここでは醤油ベースのつけ麺を出している

店長
ここのラーメンはどんなスタイルでも合いますね

フフ、もともと伸びないラーメンはないかと思ったときに出会ったのが今のつけ麺です

ここのラーメンはとても温かい味がしますよ

フフ、おいしさとは千差万別ですからね
私は心の部分で追求することにしました

その心は優しさですね

店長、面白い店ができたんですよ

どんな?

入ってすぐはなんだここはと思い
食べた後はもう二度どく来るものかと思う

しかし、後になってふとまた無性に食べたくなるという、、、

それは人間らしさですね

フフ

老人はゆっくり腰を上げた
もう、弟子はいないし自分の味を守ることだけ
ただなにかやりかけたことがあるのではないかと思ってはいた

一ヶ月もたたないうちに俺たちはここの界隈では知らない人はいないラーメン屋になっていた
営業日も不定期
営業時間もスープが切れたら閉店
たしかに理想的な経営状態だ

しかし、

ある日
よし
と哲夫は頷いた

俺はもうすぐ屋台へ戻るよ
なんだか自分のラーメンが心配になってきた
お前には技術も経営手腕も大体わかってきたはずだ

うん

すまなかったな
最初は言いたい放題で
でもここで得た信頼関係はどこへ行っても消えないぞ

自信を持て

そういうと哲夫は店からいなくなった


俺は暫く店を閉めることにした
たしかに哲夫のスープを提供すれば今まで通り自由な経営でいい


しかし、今まで培ってきた自分のスープとはなんだろう
そして




俺は一種の迷いも感じていた

強烈なスープを堪能して求めるように去っていく人たち

たしかにそういうものを求められる時代ではある
ただ

誰にでも安心して食べさせられるスープはないだろうか
老人や子供
果てや病人まで


俺は試行錯誤した

野菜をふんだんに使ったり
いっその事豚骨をやめようともした

そして出来上がったのが
醤油ベースの野菜スープ

目標はうどんも凌駕するほど胃袋に優しいもの
物足りなくても良い
自分の優しさがしみてくれれば

あら
早速、街中にはいつもと違う匂いが漂う

哲夫との関係で全く真逆にまでいってしまったラーメンへのスタンス
試される時が来た

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