2010年3月30日火曜日

零式

あんなに優しかったあいつが狂ったのはいつだったからだろうか
何もかもを失った
心はすべて鬼となった
自業自得だと誰かは笑う
ばつの悪いときにまた現れると思う



壱号機
聞こえるか?
応答せよ


はい
ただいま敵の本拠地がうっすら見えてきたところです
黙視すると

レーダーで確認出来る範囲で今はいい

単独行動はなるべく控えるようにな

今、
ヒューマノイドに乗っている
祖国のため、なにより自分の大切な人のため

戦っているのはカルトな宗教団体が築いた暫定区
いつミサイルが飛んでくるのか分からない
俺たちはロボットで市街地を制圧しなくてはいけない

無線がはいる
おい、いまどこにいる
機体がレーダーに映らないステルスになってるぞ

俺は
いや機体の調子が悪いから敵に気付かれないようにしてるだけだ
直に直る
仮に俺ひとりの力で決着がつけれるのなら
願ってもないことだと思わないだろうか
秘策はあるんだ

エンジンの出力を最大に上げた
目的地まで3000
陽は落ちすでに真っ暗

しかし、暗闇の戦いは死ぬほど慣れている
何故か晴れ晴れしかった

死ぬことでもないましてや犠牲になることでもない
世界がひとつになれるのなら

ちょうど頃合いも良くなった
静かに敵陣に上陸する

案の定
敵のロボットが数体待ち構えていた
名前も顔も知らない
しかし、俺はヘドが出るくらい憎々しかった
正義の元に一体いくつもの国がなくなってしまったのか

独りで敵陣に潜り込むとは大した度胸だな
それとも、おまえらお得意の特攻ってやつか?

覚悟は一瞬で決まった
まず右の機体を羽交い絞めにした
すかさず応戦される
振り向きざまにけりを入れる
リーダーが誰かわかればあとは良い

統率を失った群れは
暴れまわるだけ
触覚を失った昆虫のように

突然なにか鋭い感覚が右半身を襲った
槍を刺された
それも真っ二つに


なぜこんな場所に
俺はお腹のあたりに生暖かいもの感じた
血だった

痛みも苦しみもなかった
しかし目にもこぼれ落ちるものがあった

まだ死にたくない
国で待っている母親、殉死した父親
結婚したばかりの妹

これで決着がつけれると思ったんだがな
甘美な時間は終わり
後は機体の中で悶える自分がいた
敵は自分以上に自分を知っていた
悔しかった

そして漆黒




あいつ、なんの音沙汰もないんですけど
敵陣に気になる反応があるんですよね

あぁ聖なる矛を使ったな

大きな人柱ができるところだった
そしてすべてが終わるはずだった
しかし、戦局は泥沼になってゆく


俺は宙に浮いているのか
気がつけば真っ暗な空間に佇んでいた


気がついたかね

誰かの声がする

俺は確か

君は死んだのさ

そうか、しかし晴れた気分だ

これから君に二つの選択肢を用意した
自由に選びたまえ

もう一度生きて全てに償いを与えるのか
ここに居るのか

まだ俺には分からない
だって最後につかもうとした花が
すでに枯れていたんだからな

俺は暫く考えることにした

つづく

0 件のコメント: