対局は中盤へと向かう
歩の突き捨てで相手の陣地にやっと潜り込めた
銀をぶつけ
角もぶつけ
最後に飛車を成らせる予定だった
相手は静かに自分の陣地に歩を垂らした
あまりに静かすぎて何を狙っているのかはわからなかった
たぶん、予想通り飛車を叩くつもりだ
飛車を大事にずらした
あまりいい手がないと俺はかってに桂馬を飛ばすクセがある
飛び道具のつもりなのだろうがこの戦法は根拠がない上に歩の餌食になる
一進一退で進んで行った
50手目ぐらいだろうか
いきなり相手は自分の空けてしまったスペースに角を打ち込んだ
しまったと心で叫んだところで不利な戦局にはかわりなかった
俺は自陣を捨てて
捨て身の攻撃に変換した
とった駒をじゃんじゃん活用して隙を与える暇を与えない
しかし、なんで俺はこうも角に弱いのだろうか
今までの積み重ねたものがあっという間に崩れ去る
とった駒もだんだん尽きてきた
後は防戦するのみ
しかし投了は絶対にしない
相手が詰ませるのをしっかり確認しなくては負けたことにはならないのだ
王が泣いてるな
裸同然になってしまった王を俺は呆然と見た
対局が終わって青年は
少し首を左右に振って
少しは期待していたんだがな
所詮自己満足の将棋だな
何が言いたいんだ
俺は唇を微かに震わせながら小声で反応した
相手の胸を借りたんだ
勝ち方にこだわるなよ
いつからだろう
綺麗な勝ち方、そして負け方にこだわるようになった
それはやはり自己満足なのだろうか
それよりも自分より実力のある駒
飛車や角をかわいがる姿勢
それは今までずっと変わらなかったこと
いわゆるそれではヘボ将棋なのだが
剥き出しになって守るものもない王がかわいそうだった
裸の王様はやめよう
そして時に相手を思い切り信用してコミュニケーションを取ることも大切なのかも知れない
なにより主人公はなんにもできない自分なのだから
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